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 2003年10月02日更新

独立リーグへの夢

<町の力を−−比佐仁さんの米国報告>

 スポーツ・トレーニングの最新科学を導入している比佐仁(ひさ・じん)氏が、米国の野球事情を視察して、このほど帰国した。

 大リーグに関しては生の情報が、なだれ込むように日本に届いているが、米国野球の本当の「土台」は、まだまだ知られていない。

 比佐氏は、70年代後半から米国のフットボールを支える体力トレーニングを研究、最先端のスポーツ科学「スポーツ・プログラムス」を母体に日本に導入し続けてきた。

 個人スポーツにおける科学的なアプローチでは、日本もかなりのレベルに達しているが、教育システムの中に組み込んだ、日本全体の取り組みは、あまりにも未発達。それは、社会とスポーツの関わり方の問題でもあると、同氏は指摘している。

 以下は、比佐リポートの聞き書きだ。

 −−今回は、日本に独立リーグを導入できないかという、いわば途方もない(笑い)試案を抱いて、米国の「大リーグ未満」の部分をあらためて探ってきました。ご存じのように、大リーグ機構の外側に、大リーグ機構とも密接な関係を保つ独立(インディペンデント)リーグというのがあります。大リーグ(マイナー・リーグ)に拾われなかった選手、そこからケガなどで外れた選手を含め、「それでも自分は野球をやりたいのだ」と、人生をベースボールに賭けた男たちが集まる、熱気のあるリーグです。

 −−レベルが低いのかと思ってつぶさに観察してみると、とんでもない。事実、この独立リーグに入るための厳しいトライアウトがあるんです。このトライアウトだけでも、日本に導入してみたいですね、大リーグ方式の採点評価システムでチェックし、その結果を(参加費を払って受験する)全選手にきちんとフィードバックしています。見た目では、巧さという点だけでは日本人選手でも通用しそうな印象もあったのですが、実際に生活までともにすると、この独立リーグに通用することすら、難しいかもしれないと感じました。

 −−松井やイチローといった、日本のプロ野球界に、ある意味でおぼれなかった選手、染まらなかった選手は別として、プロも含めて、日本の選手はまだまだ甘い部分を残しています。独立リーグに来る選手は、だれもが「1試合20ドルでも、1シーズン2000ドルでもいい、自分は野球がしたいんだ。いつかはい上がるんだ」という強烈な意志と夢を持っていて、それに耐える体力を備えているんです。日程がきつくても、アウエーは全部バスの車中泊でも、誰も文句を言わない。そのタフさには、日本人選手はなかなかついていけないでしょう。

 −−選手だけでなく、米国人自体が野球大好きで、社会が、町が野球を愛していまず。ボストンの周辺では、いくつもの町が協力して6、7月の2カ月、夏休みに入った全米の大学チーム計100チームを招待して、8つのリーグを主催している。ナイターで、小さな町では数百人しか観客は集まらないが、入場券10ドルを払って、町中の家族がやってくる。ファールボールはすべてプレゼントだから、子供たちは喜び勇んでボールを追いかけ回し、飽きてくると試合そっちのけで、裏の芝生でキャッチボールを始めてしまう。公式の学生スポーツとしては、野球はメジャーではないが、実は町が支えるこうしたバック・グラウンドが米国にはあるんです。

 −−独立リーグもそうした「支え」を受けて、どんな町でも僅かな経費でフランチャイズの名乗りを上げることができるシステムを採っています。選手の給料もそれほど高くはない、ボランティアが場内整理やチケット売りをする。前述の学生のサマー・リーグにしても、選手(学生)は、そうした「町の支え」とじかにふれあって野球をするわけだから、試合と同時に「野球とは何か、選手とは何か」を体験するわけです。上手だからヒーローになれるのではない、強打者だから威張れるのではない。まずもって「町の支え」あって、自分たちは野球ができるのだ、というスポーツの本質のひとつを、学び取るわけです。独自の意志、独自の野球愛、規模は小さくても独立の採算。これが米国野球の土台にあるんですよ。

 −−考えてみると、その「独立性」の部分が、野球に限らず、日本のスポーツ環境に欠けているかもしれない。サッカーのJリーグもプロ野球も、町の独立した意志や手作りの構造ではなく、親会社、親企業に依存して「の、ようなもの」を形作っているケースが、全部ではないが多い。だから選手も、社会との本当の触れあいができない。「月5万円でもいい、野球をしたい」といった強烈な意志がない、あってもそれを社会が形にしてあげていない。

 −−逆に考えれば、日本の野球は、スポーツは、これからもっともっと土台から発展する可能性を大いに残しているんです。大企業に依存した大きなチームを初めから求めるのではなく、それぞれの「町」が、独自の意志と力でスポーツを支えることが、できるはずです。いわゆる「独立リーグへの夢」を、もっと多くの人と共有したいですね。

著者の言葉
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著者プロフィル
 後藤新弥(ごとう・しんや) 日刊スポーツ編集委員、57歳。ICU卒。記者時代は海外スポーツなどを担当。CS放送・朝日ニュースターでは「日刊ワイド・後藤新弥のスポーツ・online」(土曜深夜1時5分から1時間。日曜日の朝7時5分から再放送)なども。
 本紙連載コラム「DAYS’」でミズノ・スポーツライター賞受賞。趣味はシー・カヤック、100メートル走など。なお、次ページにプロフィル詳細を掲載しました。
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