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後藤新弥の「DAYS' online」タイトル
バックナンバー 後藤新弥 スポーツ&アドベンチャー

冒険コラム↑もご愛読下さい。今週は「交点ハンティングを探す旅」を掲載します。

著書の紹介
著者プロフィル
 2005年2月3日更新

ウッズが撃ち返す

<メジャー無冠の屈辱からの再起はなるか>


 たとえば血液型の性格判断は、「遊び」として楽しむ分にはかまわないが、本当に血液型によって性格が決まると信じ込むような成人が増えてくると、放置するわけにはいかなくなる。

 有名なナスカの地上絵は、学術的には当時そこに住んでいた人たちが描いたものだが、「宇宙人が描いた」などといったロマンチックな想像が真実を上回ると、問題が起きてくる。

 スポーツもそうだ。スポーツは楽しくやるべきで、根性は無用だとか、米国ではみんな笑いながらスポーツしているから強くなるのだ、などといった書斎派の見方や希望が「スポーツの現場」にまで影響を及ぼすようになると、混乱が起きる。

 これは水曜日に見たNHKの「人間講座」の受け売りだが、間違いはいずれ自然淘汰(とうた)されるにしても、その間、肉体や知性の努力、金、時間が無駄に使われる。税金の無駄使いを招き、個人や企業にも損失を与える。

 それでも、社会は必ずしも「常に」正しいものを信じようとはしない。正しいか間違っているかをズバリということすら、時には難しい。

 そのような混迷は古代から続いているが、現代社会ではメディアが渦を巻いて世の中にあふれてくる。

 だから、だれが真のチャンピオンで、だれが一時的な優勝者にすぎないのかすら、時には不明瞭になり、突出した選手が、他の「一流選手」の中に否応なしに紛れ込まされることもある。裏を返せば、だれにもスーパースターになるチャンスがあり、その条件は時間とともに緩やかになっていく。

 真のチャンピオン。

 たとえばツールV6の自転車王アームストロングや、アメフトのモンタナや、ゴルフのニクラウスだ。

 ただ勝つだけではなく、圧倒的に強く、人がすべての動きに見とれてしまうような存在だ。日本にもいた。大鵬、中野、青木、山下、古橋、白井。

 今、タイガー・ウッズが自ら求めているのも、そうした真のチャンピオンとしての自分だろう。

 不振が続いた。

 メジャー大会では10回連続して勝つことができず、5年間キープしたランク1位の座をシンに明け渡した。「タイガーはもうだめだ」と、早速のこき下ろしも始まった。

 そうかもしれない。しかし才能と集中力、しなやかな筋肉は、傑出している。勝ち星だけで、実力は計れない。勝った数が実力だとも言えるが、外郭からの論評ならいざ知らず、スポーツの現場の人間なら、だれがどのぐらい強いか、体で分かる。タイガーの強さは一流選手のそれではない。あくまでも超一流だ。別の言葉で言えば、カリスマ性だ。オーラだ。

 何よりも新進エリートの家系として誇りをもって育てられ、「黒人だから、ハングリーだから」勝利にどん欲なのではないことが、ライバルたちの恐怖心を抱かせる。金がほしいのではない、こいつはゴルフの神髄を究めたがっている! それを感じさせるチャンピオン「候補」なのだ。

 そしてそれを具現するのが本人の責任だ。

 日刊スポーツのゴルフ担当柳田記者に聞くと、タイガーはコーチを代え、スイングを替え、「30代からの覇権」を視野に入れた安定性のゴルフにチャレンジしている最中だそうだ。

 昨年末の日本での勝利(ダンロップ・フェニックス)が一つの契機となり、ベイツアー開幕戦も制した。タイガー復活? それは4月のマスターズからのメジャー戦を待たなければなんとも言えないが、本人が目指しているのは「優勝者」ではなく「チャンピオン」であることは明らかだ。

 知られていないが、ジャック・ニクラウスにも、実はメジャーで勝てない時期があった。62年から67年全米オープンまで7個のメジャー大会で優勝しているが、その次に勝ったのは70年の全英オープン。あれほど安定したゴルフを展開したニクラウスでさえ、年齢や周囲、道具とのアジャストに「時間」を要する時期があったのだ。裏を返せば、それがあったからこそ、続く黄金期を迎えることができたのだろう。

 出場した11大会で連続してカップを逃した期間、ニクラウスもちょうどタイガーと同じ、27から30歳だった。

 タイガーが今季復活するかどうかは確約できないが、今勝てないからと言って「タイガーなんかもう終わり」と希望するのは、どうやら早計のようだ。それはデマに近い。ナスカの地上絵を悪魔の仕業と決めつけるのに似ている。

 もっとも、今季好調のアーニー・エルスは「復活したとしても、もはや以前のような絶対的な存在にはなれないだろう。他の選手がすぐ近くに群がって、独走を許さないだろう」と述べている。

 そもそもタイガー自身、以前のような、アンダー・パーの無駄使いのような勝ち方を新しい目標にも取り入れているかどうかは、分からないのだが。

 タイガーがニクラウスになるか、ジョニー・ミラーのように消えていくのか。

 真のチャンピオンになれるかどうか。

 実に興味深いシーズンになりそうだ。


著者の言葉
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著者プロフィル
 後藤新弥(ごとう・しんや) 日刊スポーツ編集委員、58歳。ICU卒。記者時代は海外スポーツなどを担当。CS放送・朝日ニュースターでは「日刊ワイド・後藤新弥のスポーツ・online」(土曜深夜1時5分から1時間。日曜日の朝7時5分から再放送)なども。
 本紙連載コラム「DAYS’」でミズノ・スポーツライター賞受賞。趣味はシー・カヤック、100メートル走など。なお、次ページにプロフィル詳細を掲載しました。
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