おやじ心の的を射る
スイム・ラン・射撃の近代3種「ビアスレシューティング」にチャレンジ!!
射撃手になってみたい。男ならだれでも一度はそんな夢を見たはずだ。それが意外にも海辺でかなった。10日、鎌倉由比ガ浜で行われた「ピザーラ杯ビーチアドベンチャー湘南2004」で、スポーツエアピストル種目を組み入れた新しい競技、「ビアスレシューティング」(近代3種)が公開された。「僕にも撃たせて」と、飛び入り参加のおやじ忍者、ついに悲願の科学忍者隊に編入なるか。
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| 写真=外したらちびっ子たちに笑われる。ドキドキ。引き金を引く。…命中、どうだい!(ちびっ子に自慢してどうする)
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ニヒルな横顔、近寄りがたい孤独の影。男はたばこに火を付けると、それを静かに垂直に立てた。吸うためではない。風向きを知るためだった。男は狙撃手だった−−。
そんな小説の一場面にあこがれたおやじは少なくない。わんぱく時代はエアガンなどなかったが、棒切れで撃つまねをして、それで十分面白かった。男の子は射撃が大好きだ。
今回は、本物だ。距離は5メートル。だ円形の的は長径6センチ、短径4センチで、ひどく小さく見える。ちびっ子たちに混じって、少し照れ笑いを浮かべながら構える。銃身のわく(照門)をのぞき込んで、銃身先端の針(照星)と標的を一直線上に合わせる。当たるかな、という絶対的な不安以上に、外したらこのガキどもに笑われるという、自我が作り出した恐怖に体がおびえる。
吐く息を静かに止めて、思い切って引き金を引く。どっと汗が噴き出す。案ずるより撃つはやすし。粒状の弾(BB弾)があっけなく的を倒していた。
これ、面白い。
10日行われたビーチスポーツの祭典「ピザーラ杯」で、日本近代五種連合がテントを設置、今年国際近代五種連合が正式認可したばかりの「ビアスレシューティング」(近代3種)の射撃競技を一般公開した。ビーチでは走る、泳ぐのオーシャンマン競技などが行われていたが、若者たちも「なんだろう」とのぞきにきては、列を作った。
このスポーツエアピストルは市販のエアガンなら2万円相当。1回ごとにレバーを引いて空気を圧縮し、空気圧で発射する。
おやじ忍者も実技訓練に参加した。半身になって腕を伸ばし、斜め上から下ろしてくる。一方の目を閉じて集中する。つい夢中になって、のぞき込むように前傾して撃っていると、日本代表藤木敏夫コーチが「リラックスして、首筋を伸ばすといいですよ」とアドバイスしてくれた。体軸を垂直にすると、確かにそれだけで安定感が増す。
当たる、当たる。
当たっても温泉街ではない。景品はもらえないが、これがレパートリーに加われば、おやじ忍者も科学忍者隊に編入できる。飛べ、飛べ飛べガッチャマン。地球はひとつだ。
ひとつ忘れていた。「射撃自体は易しいんです。スイムとランもあるから難しいんです」。
五輪で低迷中の日本近代五種連合が、底辺拡大を狙ってこの競技を開発した。国際近代五種連盟からも今年、正式認可された。
近代五種はラン、スイム、射撃、フェンシング、乗馬で構成されるが、銃の許可証(18歳以上)の関係で敷居が高く、特に女子は選手が1人もいない。スポーツエアピストルなら小学生から始められる。「敷居を低くしたことで女子中学生にも有望な選手が現れた。ビアスレシューティングで発掘した選手を北京五輪代表に育てたい。女子ならメダルの可能性も十分」と、広報担当の渡辺秀氏。
11月6、7日、初の国際大会を千葉で開く。成人クラスは、スイム200メートル(プール)とラン3000メートル。ランの間に、任意のタイミングで射撃を2回行う。1回の持ち弾は5発、各3つの的を撃ち倒す。
射撃は混雑するので、呼吸の乱れない早い周回で撃つには、スイムを上位で通過しなければならない。的を外すと、外した数に応じた罰則コースを走る。
「それならシミュレーションだ」と、50メートルほど泳ぎ、ビーチを400メートル走ってから撃ってみた。ハアハア、ドキドキ。心臓が太鼓のようにこだまする。腕が震える、目がかすむ。1発当てるまで相当の時間を要した。
待てよ、そういえば10年ほど前、米国のスポーツ科学雑誌に「センスのある選手は、無意識に呼吸数を心拍数の倍数にさせ、両方の脈動が一致したときに撃っている」という記事が出ていたのを思い出す。それをやってみる。なんとなく落ち着いて、リズムが出てきたような気がする。ゴルフのパットにも使えそうだ。忍法・脈動と名付けよう。何しろ今日から科学忍者隊なのだ。
試行錯誤していると、藤木コーチが笑いながら「射撃に入る直前に、ランのペースを落とすのがコツ。また、お勧めしませんが、的を狙わずに5発早撃ちし、計画的に罰則ランを受ける手もあるんです」。
ふむ、忍法・捨て弾の術。藤木コーチも、実はおやじ忍者かもしれない。帰りに近代五酒に誘ってみよう。
ビアスレシューティング国際大会IN千葉 兼シモンズカップ[申し込み受付中]
☆要項 11月6、7日、千葉県長生郡長柄町日本エアロビクスセンター
☆部門 ユース(小学生、スイム50メートル、ラン1000メートル=参加費2500円)ジュニア(中高校生、100メートル、2000メートル=3000円)シニア(200メートル、3000メートル=4500円)他にエリート選手の部
☆用具 射撃関係は主催者が用意
☆競技 総合タイムで順位決定(荒天の場合は体育館内で、ポイント換算方式)
☆申し込み問い合わせ 日本近代五種・バイアスロン連合(電話)03・3481・2393。http://www.japan-sports.or.jp/mpbuj。
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後藤新弥(ごとう・しんや) 日刊スポーツ編集委員、58歳。ICU卒。記者時代は海外スポーツなどを担当。CS放送・朝日ニュースターでは「日刊ワイド・後藤新弥のスポーツ・online」(土曜深夜1時5分から1時間。日曜日の朝7時5分から再放送)なども。
本紙連載コラム「DAYS’」でミズノ・スポーツライター賞受賞。趣味はシー・カヤック、100メートル走など。なお、次ページにプロフィル詳細を掲載しました。
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