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チュー中原のバスケを語ろう

2005/6/20
過去のコラム一覧を見る

エンプティーシートは何も生まない

<NBAコメンテーター島本和彦氏:第2回>

 中原雄氏(38)と島本和彦氏(58)の対談の第2回(最終回)。bjリーグ・大分ヒートデビルズのPR担当となった島本氏は、NBAをモデルにした斬新なアイデアが次々と沸いてくるそうです。【構成:飯田みさ代】

 中原 bjリーグがスタートするわけですが、「プロ」と言ってもいいことばかりではないと思うんです。ソフトが良くないと、だれも買わないですからね。僕は地べたに這いつくばるような、泥臭いイメージの方が強いですね。

 島本 今では1試合4000人以上を集める新潟も、最初は選手自らが駅前でパンフレットを配っていた。中には不満を口にする選手もいて「プロなんだから、やらなきゃしょうがない」と説得する必要もあったと聞いている。

島本和彦氏
大好きなバスケットについて熱く語る島本氏

 中原 客があってのプロですからね。でも、僕が新潟のアリーナに行ったとき、会場は非常に盛り上がっていました。何でだろうと思っていたら、試合終了後、選手がサインしたり、子供たちと写真を撮ったりしてるんですよね。あれを見て、盛り上がるわけが分かりました。あの取り組みは素晴らしいことだと思います。

 島本 選手は試合までにコンディションを整え、練習をするわけだけど、それをトータルしても普通のサラリーマンよりは働いてない。だから試合当日、10時間ぐらいの拘束があっても当然のことなんだよ。NBA選手は、必ずサインを書いた後に「サンキュー」って言うんだよ。日本だと、もらった方が「ありがとう」って言っちゃうけどね。NBA選手は、サイン1回でファンが1人ついたと考える。この違い。日本のプロにも「ファンサービスは仕事」という哲学を植え付けないといけない。

 中原 奥が深いですね。簡単なようでめちゃくちゃ難しい。

チーム色にあったアトラクションも

 島本 でも、日本って基本的にアジャスト(適応)するのがうまいじゃない。だから、bjもNBAを取り入れて、日本に合ったように改良していけばいい。まあ、結局は「ほとんどNBA」ってことになると思うけど(笑い)。だって、フィリピンがそうだからね。

 中原 韓国のKリーグだってそうですよ。

 島本 影響されないわけないって。

 中原 米国だと試合中にナッチョスとか食べるじゃないですか。ところが、韓国は「辛ラーメン」なんですよ。子供がすごいにおいをさせて、観客席であの辛いカップラーメンを食べてるんですよ。お国柄だなあと驚きました。bj各チームも、その土地の特産品とか売り出したらいいんじゃないですか? 大分だったら「地獄おにぎり」とか。

 島本 もうねえ、アイデアが次から次へと浮かんで来るんだよ。例えば地元で人気のカマボコを「デビカマ」と名付けて売るとか、「デビ〇〇」のネーミングでいろいろ商品を作りたいね。この携帯のカスタムジャケットもチームで作ったの。チームカラーの青に、このマスコットは「DeeDee(ディーディー)」。

携帯
大分の携帯カスタムジャケット

 中原 こういったものから、メーカーとのタイアップも考えられるし、地元産業への影響も出てきますよね。

 島本 後援会、ファンクラブの会報の編集長を僕がやることになったんだけど、広告も単価を安くして、たくさんの企業から集めた方がいいと思ってるわけ。クーポン券とか特典つけてね。そして、ホームゲーム20試合すべてで何かイベントをやろうと思っている。

 中原 その土地の特色をうまく取り入れたチームが、経営がうまくいくんじゃないかと思います。

 島本 興行は入ってナンボと考える米国人は、実にうまいことを言うんだよね。「エンプティーシートは何も生まない」って。要するに空席は何も生まない。配ってでもいいから、人を集めろってことなんだ。そうなると、記念におみやげを買っていこうかとか、食べたり飲んだり、会場で金を落とすでしょ。

 中原 まさしくその通りですね。

 島本 ちなみに、bjの監督は「興行ビザ」で来日してるんだよ。

 中原 興行ビザですか? やっぱり、そこでも興行ってことがクローズアップされてる。

人が集まれば、何かが生まれる

 島本 前に「ベースボールウイークリー」を読んだとき、興味深い記事があってね。マイナーリーグのあるチームが、チームの売りを問われると「うちはバーベキューがうまいんだ」って答えてたんだ。入場券にバーベキューがセットでついていて、家族4人で計25ドル。安いし、うまいし、試合も見られるって。

   中原 ジョーク交じりで言ってるんでしょうけど、遊び心から入ってるんですね。だから米国ではスポーツが文化になっている。

 島本 でもそれを冗談じゃなく、真剣に考えてみるといいんだよね。

 中原 お金もそれほどかからず、バーベキュー食べて、試合見られて、子供におみやげ買って、選手のサインももらえて…最高ですね。遊園地のあるショッピングモールのような発想ですね。

 島本 この秋、ある映画の試写会をbjの会場でやろうかという話も出てるんだ。同じ料金で試写会とバスケットの両方が見られる。お客さんは得した気分になるでしょ。

 中原 大阪なんかは、ハーフタイムを新人芸人のけいこの場とすればいい。

 島本 大勢の前でやる練習になる。

 中原 レーカーズのチアリーダーは日当75ドル(約7800円)と安いけど、ハリウッドスターや関係者が見ている前で踊ることに価値観を見いだしています。ジャック・ニコルソンに「今後、エキストラに使ってみたい」と抜てきされる可能性もなくはないですからね。

 島本 音楽好きな人に演奏の場を与えてあげようとも考えているよ。ウエルカムゲートでジャズを演奏するとか。

島本氏と中原氏
日本のバスケット繁栄のため、協力を確認しあう島本氏(右)と中原氏

 中原 いいですね。そういえば、レーカーズって生バンドだし、ヒートには本物のDJがいて、皿を回してましたよ。

 島本 レーカーズはオーナーが奨学金を出して演奏させているんだけれど、大分も地元の大学生にやってもらおうかと考えている。DJは、僕の息子にやらせようかと。

 中原 NBAを見ていると、タイムアウトの2分間にワーっと子供たちが出てきて、コートをぐるぐる走り回ったり、縄跳びしたりして、終わるとサーッと引いていくんですよね。あれは何なんでしょう。

 島本 あれは、地元のボーイズクラブやガールズクラブに「NBA選手と同じコートで何かできる」という券を配るわけですよ。それも「エンプティーシートは何も生まない」の発想で、彼らは必ず親子で来るし、何か買って帰ろうってことになる。だからbjでは、地元選手もカギになる。

 中原 家族や友人が来ますからねえ。母校の応援団とかも来ますよ。また、NBAでは試合以外でも見るものが多いですよね。音楽は止まらないし、映像なり、アトラクションなり、必ず何かやってる。

 島本 そう、アメリカでは天井からつるされた大画面を使ったさまざまなコーナーで楽しませるよね。大画面に2人で映されると、キスをしなきゃいけない「Kiss・Me」ってのは面白い。夫婦や恋人だとキスするけど、たまたま隣に座った他人とカップルにされるとたまったもんじゃないよね。

 中原 キスしないと大ブーイングですしね。

 島本 あと、あの大画面に流す文字も販売しているんだよ。「結婚しよう」でも「誕生日おめでとう」でも何でもありで、文字と一緒に本人も映されて、これがまたドラマを生む。

 中原 あっ、見たことあります。突然、カップルが映されて何かと思っていたら、画面に急にプロポーズの言葉が流れ出して、男性が女性に指輪を渡してました。女性が感激のあまり泣きだすと、会場は大盛り上がり。

 島本 大分の会場の1つ、別府ビーコンプラザでは大画面を天井からつるすらしいよ。

 中原 すごいですねえ。人が集まるところで、何かが生まれる。客からすれば、会場に足を運べば、何かがあるという楽しみがある。

 島本 それとビーコンプラザも、もう1つの会場の別府アリーナも別府駅から歩いて500メートルぐらいのところにあるんだけど、試合当日は、道の所々に生バンドを配置して、異空間を作りたいとも思ってる。

 中原 「デビルズ・ロード」ですね。

 島本 いいネーミングだねえ。

 中原 こうなったら、おやっさんと一緒に回る「大分観戦ツアー」とか企画するのもいいんじゃないですか? 試合解説だけでなく、デビルズ・ロードやらまつわる話題を全部説明するとか。

 島本 それもいいねえ。そのときはチューヤも一緒でね【第2回終了】。



 ◆島本和彦(しまもと・かずひこ)
 1946年8月18日、東京都世田谷区生まれ。玉川大出。日本文化出版「月刊バスケットボール」の編集長を経て、NBAの専門誌「HOOP」の創刊に携わる。78年から現地でNBAを取材。日本におけるNBA普及の中心的な存在で、NBAの日本開催にも尽力した。現在はNHK−BSやCS放送を中心にNBA中継のコメンテーターを務めるかたわら草の根的な活動も。今後はbjリーグの大分ヒートデビルズの広報担当としてさらなる意欲を燃やしている。

チュー中原(本名・中原雄=なかはら・たけし)
 1966年11月10日生まれ。福岡県出身。専大ヘッドコーチ。89年に専大からいすゞ自動車入り。主将として4連覇を達成した後、99年に退社後、母校専大アシスタントコーチに就任、04年4月からヘッドコーチを務める。大学史上初の全日本大学選手権、関東リーグ戦を制すなど指導力に定評があり、テレビ解説でも活躍中。愛称は「チュー」。
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