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チュー中原のバスケを語ろう
今回のプレゼント
2005/8/15
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悩んだとき、前に出るのが男だろ

車いすバスケットボール日本代表・京谷和幸選手:第2回

 車いすバスケットボールの日本代表、京谷和幸選手(34)には夢があります。1つは、障害のあるなしにかかわらず、子供たちにスポーツの素晴らしさを伝えのると同時に、障害を持つ人たちへの理解を広げること。もう1つは、日本の車いすバスケの競技力を世界トップクラスに高めることです。7月に求人情報誌Salidaを発行している総合広告代理店「サリダ・アド」へ転職し、さらに講演やクリニック活動に力を入れる京谷選手が、中原雄氏(38)へ素直な思いを語りました。【構成:飯田みさ代】

 京谷 8月の26〜28日に福岡の宗像市で、NPO(特定非営利活動)法人バラエティクラブ主催のサマースポーツキャンプがあるんです。障害を持ち、車いすを常用している子供たちにスポーツを教えるもので、今年で5回目。去年はアテネがあって参加できなかったので、2年ぶりの参加となります。

 中原 どんなことを教えるんですか。

京谷選手
千葉ホークスの中心選手として活躍する京谷選手(撮影=多田さやか)

 京谷 小さいころから多ジャンルのスポーツを体験させて、その楽しさを教えたいというコンセプトの下、いろいろなスポーツを教えます。バスケットは僕を含めて2〜3人で、1グループ10〜15人を見る形ですね。いずれ、その中からパラリンピックアスリートを育てたいんですが、まだそこまではいってません。

 中原 それまでスポーツをやったことがなかったお子さんも多いんじゃないですかね。そんな子がスポーツに触れて笑顔を見せたり、喜びを表現したりすると、親御さんにとってもたまらないでしょうね。

 京谷 たまらないでしょうね。そういう子供たちは家の中にいることが多いんですよ。養護学校と自宅との往復とか、そんなもんなんです。スポーツなんかやったことがなくて、僕が1回目にかかわったときは、みんな「病人」のような顔をしてました。それがバスケットや陸上やテニスをやっているうちに、元気が出てきて、頑張ったからほめてあげるとすごく喜んで、最後は、参加した全員が友だちになっていました。

 中原 それは、胸に迫るものがありますね。

 京谷 それを見て「これだ」と、今後の活動の軸となるものを見つけたんです。今は、バスケットの競技者なのでバスケットを教えてるわけですけど、広い意味でのスポーツというものを、障害のある子供たちに教えていかなくちゃいけない。また、そういう子供たちを取り巻くのは健常者。そこの環境、理解さえしっかりしていれば、障害のある子たちが施設に入らずに、普通に、一緒に生活ができるかもしれない。その理解という部分で、小学校や中学校に行って講演活動をしているんです。

 中原 健常者に、障害者のことを知ってもらうということですね。

 京谷 講演では、子供たちに実際にバスケットをやっているところを見せます。また、子供だからすごい質問をしてくるんですが、すべて包み隠さず答え、教えます。すると、子供たちも車イスに対する考え方が変わってきて、感想文で「かっこいい」と書くんです。多分、シュートを入れたり、パスしたりする姿だと思うんですけど。子供は素直だから、僕も素直に受け止めているんですよ。

 中原 現役のとき、僕も知的障害者のクリニックをやらせてもらったことがあります。彼らの喜んでいる顔を見たら、僕もすごくうれしかった。本来のスポーツの姿って、そういったものですよね。バスケットというより人生にプラスになりました。今回の京谷さんのキャンプもぜひ、見たいですね。

 京谷 ええ、都合が良ければぜひ、来て下さい。

星野仙一氏の言葉に背中押された

 中原 僕、相田みつをの言葉が好きなんですよ。「大事なものは表に出ない」とか「根っこ」という言葉。コーチをする僕にとって、心の支えになるんです。

 京谷 中原さんと初めてお会いしたときも、相田みつをの話が出て、それから相当、影響されました。トイレの日めくりカレンダーもそれにしましたもん(笑い)。

中原氏
言葉の重要性について語り合う京谷選手(左)と中原氏

 中原 こう見えても、僕も悩むときがあるんですよ。そういうとき、彼の言葉で心が洗われるというか。

 京谷 言葉ってやっぱり大切ですね。

 中原 自分の思いを伝えるには、それが重要ですからね。

 京谷 7月に求人情報誌「Salida」を発行している総合広告代理店「サリダ・アド」という会社に転職したんですが、決めるまでものすごく悩みました。サリダは千葉ホークスのスポンサーで、昨年末からずっと誘われていたんですが、民間ですから、先が見えない。それまで勤めていた千葉県社会福祉協議会は、安定という意味では上ですよね。家族を養う身として非常に考えました。

 中原 安定を選ぶか、可能性を選ぶかですね。

 京谷 ちょうど悩んでいるとき、阪神のシニアディレクター、星野仙一さんの講演を聞きに行ったんです。その中で、阪神がFAで金本知憲外野手を取ったときの話が出たんですね。あのとき、阪神のほか巨人、中日が獲得に興味を示していた。決断を迫られて悩んでいる金本選手に対して、星野さんは「思い悩んだときに前に出るのが男だろ」って言ったらしいんです。阪神の提示額は3チーム中、最も少なかったみたいなんですが、金本選手は、星野さんの人間性にほれて、阪神入りを決断した――。その話を一緒に聞いていた嫁さんから「まさに、今のあなたのことだね〜」って言われて、それでポンと背中を押されたんです。

 中原 言葉の威力は、すごい。

 京谷 体に電気が走りましたね。

 中原 僕は言葉ではないけど、引退して、このままサラリーマンとして会社に残るかどうか悩んでいたとき、背中を押されたことがありました。いすゞ自動車時代、チームの音響を担当していたのが、「柳ジョージとレイニーウッド」でベースを担当していたミッキー山本さん。僕は中学時代から「柳−」が大好きだったから、最初にお会いしたときから懇意にさせてもらっていたんです。ミッキーさんは毎回、機材をトラックに積んで、トラックの中で寝たりしながら、全国どこにでも来てくれました。ほとんど金をもらわず、趣味の範囲でやってくれていたんですね。僕が迷っているとき、ミッキーさんが、アン・ルイスさんのバンドでギターを担当していたデカパンさんと2人でコンサートをやるというので、見に行ったんです。そして、そのベースを弾いている姿を見て、会社を辞めようと決めました。この人は1番好きなことをやっている。好きなことをやり続けるって素晴らしいと思って、次の日、会社に届けを出して、母校専大に転がり込んだんです。

 京谷 それも、すごいいきさつですね。

 中原 あのとき、自分の銀行口座の残高は526円で、下ろすことさえできなかった。笑うしかなかったですよ。そっからのスタートです。僕は収入の安定よりも、精神的な安定を取りました。

 京谷 今の会社は僕の活動を全面的に支援してくれているので、本当に感謝しています。前のところも理解はありましたが。今のところはそれが仕事になっているので、ありがたいのと同時に責任も感じています。

全国規模のトップリーグを

 中原 今度、バスケット界にもプロリーグのbjリーグが発足しますが、元プロサッカー選手の京谷さんにはどう映ってますか?

 京谷 なんか、見切り発車ですよね。Jリーグの場合は、かなり前から準備を進めていたし、サッカー界全体が盛り上がっていた。海外へ視察に行ってたし、1年前には10チームに分かれて準始動って感じだったんですけど。またプロという部分で考えると、一流のトップ選手がいないのは寂しい気がします。

 中原 確かに、現時点ではJBLの方が選手レベルは上ですからね。でも、僕は成功して欲しいんです。Jリーグみたいに行かなくてもいいから、今後につながって欲しい。

 京谷 車いすバスケも、新しい動きに乗りたいと思っています。プロではないですけれど、日本代表チームの強化のため、全国でのトップリーグを作りたいと思っているんです。

京谷選手
対談を終えてお互いの熱い気持ちを確認しあった京谷選手と中原氏

 中原 トップリーグですか。

 京谷 実は、各地域によるチーム間にレベル差があるため、全国大会にならないと、高レベルで競り合った試合ができないんです。

 中原 差がありすぎるわけですね。

 京谷 差は、どこのチーム内にもあります。例えば、ジャパンで練習したものをチームに戻しても、技術的にも、気持ち的にもそこまで達していない選手もいるから、ジャパンの選手が自分が浮いちゃうし、その練習を強制するとやめちゃうみたいですし。

 中原 やめちゃうんですか…。

 京谷 違うチームで楽しくやりたいって。僕ら上を目指そうとする人間は、とにかく全国トップになるために、きつい練習は当たり前だと思ってやっている。だけど、そうじゃない人やチームもいる。ブロック大会では、僕らはスーパーシードで2日目から登場。初日は、僕らにかなわないと思っているチーム同士でリーグ戦をやって、勝ち上がったところと僕らが戦うんです。

 中原 楽しくやりたいというのも、分かります。だれもが、その道のトップになれるわけでもないし、なろうと思ってないですしね。でも、京谷さんは世界を見ているから「これじゃ、ダメだ」という気持ちが強くて、そういった人たちとプレーするのは物足りないんでしょうね。大会を増やせばいいんじゃないですか?

 京谷 そうなんです。そこで、レベルの高い関東ブロックに、宮城MAX(宮城)ワールドBBC(愛知)No Excuse(東京)を加えた計9チームで、関東スーパーリーグが始まったんです。

 中原 強豪チームが集まったんですね。

 京谷 今後は関西や九州も巻き込んで、全国規模のリーグになればいいなと。あとは単一チームだけでなく「選抜チーム」にすると、レベルがすごく上がります。

 中原 能力のある選手は、必ずしも強豪チームにいるわけじゃないですからね。

 京谷 また、僕が実行委員長になって、全国トップ4しか呼ばないカップ戦も立ち上げたんです。勝敗よりも、お互いを高めることを目的に格式の1番高い大会にしようと、こちらが招待する形を取りました。

 中原 参加すること自体が名誉という大会ですね。

 京谷 去年はスポンサーに明治製菓の「ザバス」がついてくれて、ザバス杯として開催したんですけど、今年はどうなるか分かりません。障害者スポーツは露出が限られているので、スポンサーをつけるのは厳しいんです。

 中原 企業側は、より露出度の高いところを好みますからね。

 京谷 大会の遠征費も個人持ち出しなので、経済的には非常にきついです。だから、もっともっと障害者スポーツの知名度を上げ、支援者を増やしていくことが、必要だと思っています。【第2回終了】

今回のプレゼント


◆京谷和幸(きょうや・かずゆき)
 1971年(昭和46年)8月13日、北海道室蘭市生まれ。室蘭大谷高を経て古河電工入り。ジェフ市原(現千葉)のMFとして、Jリーグ1期生。U−20日本代表、U−23日本代表候補。Jリーグ開幕半年後に交通事故に遭い、半身不随に。車いすバスケに出会い、日本代表としてシドニー、アテネのパラリンピックに出場。現在は日本代表の副主将。陽子夫人との共著「車椅子のJリーガー」では、事故11日後に病室のベッドの上で入籍した話など、事故を乗り越えた軌跡が書かれている。家族は、夫人と1男1女。O型。

チュー中原(本名・中原雄=なかはら・たけし)
 1966年11月10日生まれ。福岡県出身。専大ヘッドコーチ。89年に専大からいすゞ自動車入り。主将として4連覇を達成した後、99年に退社後、母校専大アシスタントコーチに就任、04年4月からヘッドコーチを務める。大学史上初の全日本大学選手権、関東リーグ戦を制すなど指導力に定評があり、テレビ解説でも活躍中。愛称は「チュー」。
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