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2005/8/22

バスケの選手って「顔」が見えない
| アーティスト・SPHERE of INFLUENCE:第1回 |
若手ラッパーの代表的存在、SPHERE of INFLUENCE(スフィア・オブ・インフルエンス、25)は、大好きなバスケットボールのイベントにできる限り参加し、ヒップホップとバスケットの両方を広めようと活動しています。日本のバスケットを「見るスポーツ」として広めるには何が必要か、中原雄氏(38)と意見を交わしました。【構成:飯田みさ代】
スフィア 今月28日に渋谷代々木公園のナイキコートで、5オン5のストリートバスケットボール大会があるんですよ。一緒に出ませんか?
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| バスケの話に目を輝かせるSPHERE |
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中原 じゃあ、うち(専大)の学生に声をかけましょうか。時間が空いているといいですけどね。彼らは現役バリバリだから、僕が出るよりいいでしょ。めちゃくちゃ跳んで、ダンクするヤツもおるし。
スフィア コーチにもぜひ、出て欲しいですねえ。
中原 マジで今、腰が悪くてダメなんですよ。朝5時半に起きてウオーキングしてるんですから。ハハハ。それにしても、スフィアはバスケット大好きで、日本のバスケをどうにか盛り上げたいと真剣に考えてるよね。話してるときの目が違うもん。
スフィア バスケットはホント、大好きですね。
中原 この夏、アメリカへ行って、いろいろな場所で練習や試合を見てきたんだけど、あらためて日本って遅れてる、間違った方向へ行ってるんじゃないかって思いましたね。
スフィア 例えば?
中原 ある体育館でカルロス・ブーザー、ジェーソン・カポーノといったNBA選手2人に、地元の高校生や大学生が交じって練習していたんです。それを3人のコーチが指導してたんだけど、みんな着ているユニホームが違うわけ。最初、何の集まりなんだろう、と思っていたら、エージェントが一緒なだけだって教えてもらったんですよ。この時期、エージェントが音頭をとって、契約選手を集めてトレーニングさせるんだって。そこは派閥や垣根は全くなく、純粋にバスケットを追求する者たちが真剣にトレーニングに励む場所となっていた。それを考えると、違う団体は認めないと言ってる日本とは、エライ違いだなって。強くなるために1つになるのは当たり前、ということを見せ付けられて、衝撃を受けましたね。
スフィア オレは、協会だ、JBLだ、bjリーグだって言われても、細かいことは分からない。でも、目指すものが同じなら協力しあうべきだと思いますね。音楽でも、こんなことがありました。レコード会社も、やってることも違うんだけど、すごいメンバーが集まってコンピレーションアルバムを出したんですが、エージェントが同じだからできた、ってことが。
中原 ファンは、すごいメンバーが一緒にやってるってだけでゾクゾクするからね。
スフィア こんなすごいやつらが集まったぜ、ライブ見て〜って、なりますもんね。ヒップホップのアーチストって「広告塔」になれるんですよ。服とか身に付けてるものもそうだし、生き方も。僕は、自分自身がバスケットの宣伝につながればいいな、と思っている。バスケを知るきっかけ、その入口を広げるっていうか。それってすごく難しいものだけど、1番頑張ってるところですね。
オフのイベントこそ重要
中原 CD出して、顔も売れてる人が、バスケットやってる会場に足を運んでくれるのは大きいよね。スフィアは目線も低いし、親しみやすいし。
スフィア 音楽は「仕事」。自分は別に「雲の上の人」じゃなくて、みんなの近くにいるんだってことを出したい。オレの周りにはバスケットが大好きな人間がたくさんいる。ストリート・バスケのイベントに行くと、プレーヤーはみんな、オレのこと知っててくれて「海外に行ってバスケしたい」とか「英語しゃべりたい」とか聞いてくるんです。だから、オレがパス出して練習させるとかじゃなくて、彼らに自分の知っている世界を教えてあげること、そういう世代を育成することが、バスケ人気の拡大になるんじゃないかと思ってます。
中原 そういう存在、つまり「アイコン」を増やすことが必要だよね。それが、バスケ界をよりよくするきっかけになる。
スフィア 2年前からやってる月刊誌「ダンクシュート」の連載を読んでいる人も多くて、「ヒップホップは聞かないけど、連載は読んでます」ってのもうれしいよね。
中原 身近な感じを作るため、JBLの選手もオフ中にはイベントやクリニックにできるだけ参加して欲しいんですよね。僕から見ると、まだまだ足りないと思いますよ。また、イベントの主催側も、選手側に「やるから来て下さい」というインフォメーションを十分に流してないのかもしれない。出欠は別として、声をかけることが必要かも。
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| 「ほんまバスケットが好きなんやなあ」と言う中原氏と笑顔のSPHERE |
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スフィア バスケットの選手って「顔」が見えないんですよ。道歩いている人にだれがいるか聞いても、名前出てこないし、顔も分からないんじゃないかな。
中原 確かに、バスケ界では通用しても、世間一般には全く知られてないのが現状かもしれないね。
スフィア 企業チームだと、規制があって動けないんですかね?
中原 でもさあ、オフのイベントだからね。「試合の1週間前に来い」と言われてるわけじゃないし、それも仕事の一部だと考えて欲しいわけよ。ケガの保証は? と言うのであれば「お前はバスケットを広める気はないのか。ケガしたら治せよ。お前、アスリートやろ。素人とやってケガすんのかよ」と心の中では言いたい。
スフィア アイバーソンなんか、バスケしなくても撃たれる可能性はありますからね。死んじゃうかもしれないんですよ。オフ中のケガに対して、規制なんてできないですよ。
中原 完ぺきな規制は無理。僕がマイケル・ジョーダンを好きなのはそこなんですよ。ブルズと契約を更改したとき「いつでもどこでも、自分が好きなときにバスケットができる」という条項を入れたんです。やりたければ、いつでもそこら辺にいる人たちと一緒にピックアップゲームをやるんですから。
スフィア すごいですね。でも、それが普通の感覚かもしれないですね。
中原 僕はアメリカで刺激を受けたことを、まずは大学で実践します。9月10日からリーグ戦が始まるんだけど、ベンチや控えメンバーを集めて、通常ならオフの月曜日にピックアップゲームをさせようと思ってます。うちのほか明大、日大、法大、拓大が賛同してくれているのが心強いですね。
スフィア めちゃくちゃいい試みですね。選手も、そんなチャンスがあれば、応えようと思いますもん。
中原 極端な話、2チーム集まるだけでもいいんですよ。いつもと違った顔ぶれが対戦し、真剣勝負をすることで、レギュラーじゃない子たちもモチベーションが維持できるし、力もつく。明日につながることをやっていかないとね。中学生までは、アメリカ人も日本人も同じレベルですよ。身長は違っても、技術的には変わりない。
スフィア いつごろから変わっちゃうんでしょうね。指導方法の違いかな?
中原 そう、それを知るために現地へ行ける時は行って、勉強しなきゃいけないと思っている。
スフィア NBAって、遊園地みたいな感覚で夢があるんですよね。エンターテインメントのいい成功例ですよ。日本人は型にはまってしまって、遊び心が足りないように思える。
中原 新しく始まるbjリーグにはぜひ、アメリカのいい点をまねして取り入れて欲しいですね。お客さんが見やすい環境、また来たいと思えるものをまねして欲しい。オフコートでの活動も見習って欲しいね。
盛り上げるためのパフォーマンス
スフィア 客を盛り上げるためのパフォーマンスってのは必要ですよ。本当は余裕で取れるボールなのに、わざとギリギリで取るとか(笑い)。
中原 公式戦では難しいけど、オールスターだったら何でもありですからね。お客を喜ばせるような最大級のパフォーマンスを見せて欲しいですね。ダンクばっかり見せるとか。
スフィア そんなふうに考える余裕がないんでしょうね。昨季のJBLのオールスターを見に行ったんですが、ゲームの中に真剣勝負の部分と、ファンを喜ばす部分と両面あれば、もっと盛り上がるんじゃないかと思いましたね。例えば、ディフェンス1つにしても、「本気」でやるときと、オフェンス側にうまくやらせるようにするときと、強弱をつけてやったらどうかと思うんですよね。
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| 客を呼ぶパフォーマンスについて、アーティストからの見解を語るSPHERE |
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中原 ノーマークはいけないけど、うまいことディフェンスしてるように見せながら、ダンクを打たせるといったようにだね。
スフィア 抜かれた方は、「やられたー」とかオーバーなリアクションを見せるとか。「やられ役」として盛り上げる。
中原 1オン1とかもないよね。NBAだとよく見る光景だけど。コーチ陣も、その選手の得意なものを出せ、と言ってないのかな。
スフィア ファンはその選手の持ち味、個性を存分に見たいですからね。リーグ全体が1つになって、ファンの要望に応えて欲しいんですよね。
中原 1人だけやるぜ! って熱い男がいても「お前、寒いねん」って言われかねないからな(笑い)。
スフィア プロ野球の新庄剛志(日本ハム)も、アメリカ流のファンサービスを習ってきましたよね。跳ばなくていい場面で、あえてホップするとか。
中原 僕ねえ、新庄って素晴らしい感性をしてると思うんだよね。マスクかぶったり、違う選手のユニホーム着たり、オールスターでダイヤモンド入りスパイク履いたり、黄金バット使ったり…。野球選手の部分以外で、新庄を好きになっている人って多いと思うんですよ。やりすぎと言う人もいるけど、必要なものだと思うね。
スフィア 新庄を見たいから、野球見る人も増えるじゃないですか。そんな風に、バスケットを「見たいスポーツ」にしたいよね。それに、野球やサッカーの選手って試合以外で、いろんな活動してますよ。イベントの参加も結構多いみたいですし。夜の活動も盛んですけど(笑い)。
中原 僕は、キャバクラに連れて行ってもらったのは、引退してからですね。それまで全く行ったことがなかったですね。
スフィア えー、行ったことないんですか? ダメですよ。遊ぶときは遊ばないと(笑い)。というか、オンとオフとの切り替えがうまくないのかもしれない。プロ野球のある若手選手は「リーグなんて、チームなんて関係ない。主役はオレら選手やから」と豪語してましたけど、それも一理あると思うんですよ。
中原 分かった! そや、バスケ選手は、選手がメーンになってない。「協会が」「チームが」と上ばっかり気にして、型にはまってしまってるんや。選手がメーンにならないと、面白さを伝え切れないな。
スフィア ファンは、選手を見に行くんですからね。いつもオレは「バスケの話題で飯食いてー」って、思ってる。みんなが共通の話題としてバスケ知ってるって環境になればいいなあって思ってるんだけどなあ。【第1回終了】
◆SPHERE of INFLUENCE(スフィア・オブ・インフルエンス、本名・坂倉友之)
1979年12月8日、東京生まれ。小学時代に、ヒップホップ界のカリスマ的存在、兄ZEEBRA(ジブラ、本名・横井英之)の影響を受け、ヒップホップに目覚める。中学2年で単身渡米し、ボストン、ニューヨークで7年間過ごす。98年、兄のアルバムなどに特別参加し、00年に帰国。02年、デフ・ジャム・ジャパンから「DAY ONE」でメジャーデビュー。公式HPはhttp://www.sph-ere.com
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◆チュー中原(本名・中原雄=なかはら・たけし)
1966年11月10日生まれ。福岡県出身。専大ヘッドコーチ。89年に専大からいすゞ自動車入り。主将として4連覇を達成した後、99年に退社後、母校専大アシスタントコーチに就任、04年4月からヘッドコーチを務める。大学史上初の全日本大学選手権、関東リーグ戦を制すなど指導力に定評があり、テレビ解説でも活躍中。愛称は「チュー」。
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