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2005/11/21

部活動スポーツの弊害
| 神奈川県立逗葉高バスケットボール部顧問・小田島誠氏:第1回 |
教育現場から見た日本のバスケットボールの現状はどうなのでしょうか? 元関東高体連の強化委員長や全日本U−18委員を務め、国内トップレベルの高校生を指導してきた小田島誠氏(47=神奈川県立逗葉高教諭)は、スポーツが学校教育の場に任されてきた「弊害」を中原雄氏(39)にきたんなく語りました。トークバトル第1ラウンドです。【構成:飯田みさ代】
中原 教育現場に20年以上もいる小田島先生には、今の日本のバスケット界はどう映っていますか?
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| 教育現場から見るバスケットボール界を語る小田島氏 |
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小田島 そうだね。実は、日本国内にサッカーゴールのない学校は結構あるけど、一対3万6000円のバスケットボールのリングのない学校はわずか1%と、リングのない学校はほとんどない。体育館には、当然のようにコートのラインが引いてある。世界的に見ても、これだけバスケットボールが浸透している国はないんです。
中原 確かにそうですよね。リングのない体育館ってないですよ。
小田島 そう。みんなバスケットボールをやったことはあるし、「楽しい」ってことも知ってるのよ。だけど、上に行けば行くほどダメになる。それが摩訶不思議なんだ。
中原 そうですよねえ。
小田島 身体的なこともあるけど、それ以上に文化的な背景が大きいと思う。
中原 文化的背景ですか。
文化になっていない日本スポーツ
小田島 スポーツというものは人間形成に役立つ、本当に素晴らしい教材なんだ。得られるものは、ものすごく大きいわけよ。アメリカでは、これを通じて「スポーツマンシップ」を教えるの。バスケットであれば、お願いだから、僕のいいパスを取ってね。ちゃんとシュート決めてね、うまくいったらみんなで喜ぼうよ、というのが原点にある。カナダなどでもジュニア育成プログラムには「思いやりを持ちましょう、両親を大切にしましょう、コーチの話を聞きましょう」と書いてあって、小学生のときに徹底的に教え込まれるわけ。
中原 ドリブルを教えるのと同時に、競技そのものの原点を教えるわけですね。
小田島 小学時代、ガムをかみながら体育館に入ってきて、寝っ転がってる子供が、中学生になるとベンチで仲間を応援し、高校生になるとコーチの言うことを必死に聞いて練習したり、作戦を立てたりしている。そういう成長って素晴らしいじゃない。そういったことが国民1人1人の意識にあるから、スポーツそのものの位置付けが高い。
中原 子供たちにとって現実的な話、NBAで高卒プレーヤーが活躍しているという事実が成長を促していると思います。同年代の子がガンガン活躍していたら、ものすごく刺激になるじゃないですか。
小田島 そうなんだよ。でも日本は、依然としてスポーツを、スポーツ選手を軽視している傾向がある。五輪金メダリストだって、引退後の職に困る状況で、いつまでも体を張らないと、生きていけない現実がある。スポーツに関する法律を定め、選手たちのその後についても整備しないといけないと思うんだよ。高校教師の立場からすると、子供たちをそんな不安定な世界に放り出せない。
学校から切り離し、クラブチーム構想へ
小田島 これまで、国内のスポーツのすべてが学校スポーツに委ねられてきたという歴史がある。これだけ学校スポーツが発達しているのは、先進国の中では日本のほか、アメリカと韓国だけなんだ。だれでもできるという利点はあるけれど、トップアスリートは育ちにくい。
中原 確かに。そもそも長期的に選手を育成するという発想がないですよね。
小田島 対して、ヨーロッパはクラブチームが主流なんだよね。例えば、ドイツにある大手製薬会社のスポーツクラブ。3歳から80歳ぐらいまでの会員がいるんだけど、敷地内のフィールドには有名なプロサッカーの選手がいたり、アリーナにはユーロリーグのバスケットボール選手がいたりして、プロ、アマかかわらずみんなが友だちなんだよ。
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| 小田島氏の話に耳を傾ける中原氏 |
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中原 それはいい環境ですよね。
小田島 プロ選手の人間性も素晴らしいから、子供たちは「あの選手について行こう」と思うし、年配の方はプロに遠慮なく、モラルなんかを教えるわけですよ。それがものすごく自然に行われている。
中原 うらやましいですね。
小田島 日本はそういった環境とは正反対。学校の部活動に委ねるところが大きく、必然的にわれわれ教員の責任は大きくなる。
中原 今は少しずつ増えてきましたけど、かつては部活以外でスポーツをやる場がなかったですからね。
小田島 でも、スポーツは「やる人」と「見る人」がいるので、これからのスポーツ環境は大きく変わってくる。これまでは1つの大きなピラミッドがあって、みんながその頂点を目指したんだけど、これからは「トップアスリートのピラミッド」と「見る側、楽しむ側のピラミッド」に大きく分けられる。双方に加わる人も多少はいるけれど、ほぼ2極化される方向なんだ。
中原 なるほど。
小田島 すでに国も、平成13年から23年の間に広域スポーツクラブ、地域のスポーツクラブを作りましょう、そして学校体育からスポーツを離しましょうと基盤づくりを始めている。僕はそれに大賛成。でも教師の中には、学校体育から部活という「ビクトリースポーツ」が外れていくという感覚を分からない人が多い。なぜなら、他国でクラブチームが成功している状況を知らないし、知ろうとしないから、全くイメージできないんだよ。
中原 今、自分がやってることしか考えられない。周りを見られないということですね。
小田島 日本のバスケットボールのレベル向上を考えて、高校の指導者は「自分の学校さえ勝てばいい」という考えはもうやめようよ。優勝することは1つのステータスだし、そこまでの選手の努力は素晴らしい。でも、コーチならもっと違うものの見方はあるはずでしょ。かつてのインディアナ大の名将ボビー・ナイトはこう言った。「勝った瞬間を早く忘れたい。僕には次があるんだから。そんなものに浸っていたらコーチではない。今日のこの時間は素晴らしい。でもそれは、選手のためにある」。
中原 コーチはね、勝った瞬間から次のことを考え始めますからね。
留学生のスカウトルールを整備しろ
小田島 学校体育がすべてでなくなれば、外国人留学生の問題も整備されるきっかけになると思うんですよ。
中原 最近増えてますね。セネガル人。
小田島 現在、青森から九州まで計48人の外国人選手がいる。
中原 うーん、でも、心情的には微妙なんですよね。これはあくまでも個人的なポリシーですが、僕は外国から「助っ人」を連れてくることはしたくないんですね。国籍が違うけれど、日本で育った選手であれば何の問題もないんですけどね。だって、外国から選手を連れて来ること自体、自らコーチの力量を否定してることになるじゃないですか。
小田島 3年前から野放図に留学生が来るようになったことは、疑問に思うよね。複雑な事柄が絡みあってのこともあるだろうけど、僕には日本のバスケットボールの強化や育成のためにやってるとは思えないんだよ。何か、自分の学校を勝たせることしか、考えていないんじゃないかと思うんだよね。
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| 熱い語り合いの中、時折、屈託のない笑顔を見せる小田島氏 |
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中原 そういう気持ちはあるでしょうね。
小田島 言葉の通じない、全く環境の違う場所で努力を重ねてる選手はぜひとも頑張ってもらいたいと思うよ。でも、彼らもどう説明を受けて、何を理解して日本に来たのかどうなのか。
中原 まあ、100歩譲ってですね、受け入れる側がバスケットボールだけじゃなく、彼らを日本人同様に教育するとか、留学生もバスケットを通じて日本のことを学びたいとか、日本で職業に就きたいとか、そういった気持ちを持って来ていればいいですよ。でも、選手をコマとしか見ていないコーチがいたり、学校にほとんど行っていないとか、いまだに日本語がしゃべれないとか、そういった選手が1人でもいたりすると、いらぬ勘ぐりをされますよね。
小田島 そもそもスカウトのルールがないってことがおかしいでしょ。アメリカには法的な整備があるのに日本にはない。出場できる大会を制限するとか、整備することは山ほどある。見る方向を間違うと、日本のバスケットボールが発展しない。
中原 やる気なくなりますよ。
小田島 例えば、年末のウインター杯のような全国大会以外は外国人選手は出場できないようなルールにするというのはどうだ? あとは、アメリカ式にウインター杯は東西の選抜メンバー同士の戦いにして、県大会や関東大会の数をもっと増やしてみるとか?
中原 東西のオールスター対決はいいですね。東日本、西日本のトップ選手が集まって激突するわけでしょ。それは盛り上がりますよ。器の大きなアリーナで、有料大会にしてもいいんじゃないですか?
小田島 選抜メンバー入りするには、バスケットボールの実力だけじゃなく、学校の単位をちゃんと取っているとか、高校生として必要なことをクリアしていないとダメ。
中原 チームとして全国制覇するのも1つの大きな目標だけど、選手個人としては、オールスターメンバー入りすることがステータスになる。そうなれば、選手1人1人がもっと先を見てプレーできるようになるかもしれませんね。
小田島 さっきも言ったけど、日本では、まだスポーツが文化として根付いていない。スポーツの地位を高めたい、というのが私の願いであり、課題。だから、そのためにいいと思ったことをどんどん提案し、実現させていきたいと思っている。
◆小田島誠(おだじま・まこと)
1957年(昭和32)12月13日、神奈川県鎌倉市出身。茅ヶ崎高−日体大を経て高校体育教諭に。県立都岡高に17年間在籍し、高校総体に2度出場。98年神奈川国体などで少年男子のヘッドコーチを務めた。99年から逗葉高に在籍。元関東高体連バスケットボール専門部強化委員長、元全日本U−18委員。家族は夫人と一男一女。趣味はスキー。
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◆チュー中原(本名・中原雄=なかはら・たけし)
1966年11月10日生まれ。福岡県出身。専大ヘッドコーチ。89年に専大からいすゞ自動車入り。主将として4連覇を達成した後、99年に退社後、母校専大アシスタントコーチに就任、04年4月からヘッドコーチを務める。大学史上初の全日本大学選手権、関東リーグ戦を制すなど指導力に定評があり、テレビ解説でも活躍中。愛称は「チュー」。
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