宮里3兄妹「夢は家族でマスターズ」
沖縄が生んだゴルフ界の星「宮里3兄妹」を、ティーチングプロの父優(まさる)氏(56)が語った。来年プロデビューする二男優作(22=東北福祉大4年)、ツアーシード選手の長男聖志(25=ベルビーチGC)、アジア大会金メダリストの長女藍(17=東北高2年)。彼らを生活苦に陥りながらも育てた25年間を振り返り、基本理念「ゴルフに終わりはない」を強調した。夢は3兄妹の世界での活躍で、家族でマスターズに行くことだ。
私はティーチングプロであり聖志、優作、藍のコーチです。ゴルフは29歳の時、妻に連れられ練習場に行ったのをきっかけに始めました。最初は空振り。当たっても200ヤードの、どスライスでした。でも野球よりボールは飛ぶ。体に、そう快感が残りました。それから寝食を忘れてゴルフに打ち込みました。
長男聖志には3歳からクラブを握らせました。優作、藍にもです。それは「家族でゴルフを楽しみたい」の一心でした。今の状況は想像もしていないし子供をプロに、なんて思ってもいませんでした。
家計は苦しかった。共働きでしたが、私が41歳で村長選に落選したことで失職。ティーチングプロの資格を取りましたが、月15万円程度の収入しかありませんでした。それでもゴルフを続けました。子供たちは部活動と勉強をしながら、土、日には村営の土のグラウンドでアイアンを、スタンドから砂浜に向かってドライバーを打ちました。クラブは1本1000円の安物。ボールは紛失しないようにスプレーで赤く塗ったものです。練習場にあるグリーンが無料だったので一日中アプローチやパットをしていたこともあります。そんな状況だけに月1、2回のラウンドは子供も喜びましたね。ゴルフばかりを押し付けなかったことで「バーニングアウト(燃え尽き症候群)」にもなりませんでした。
3人とも中学までにジュニアで実績を挙げ、高校からは親元を離れていました。ただ聖志だけは、大学でつまずいた。ゴルフも勉強もせずに遊んで4年へ上がる際に留年。家計を切りつめて年間500万円をつぎ込んだのに…。怒った私は聖志を沖縄に連れ帰り、2年間徹底的に指導し直しました。結果、自分が目標にしたプロテストとツアー予選会を通過。シード選手になった今では、つぎ込んだ金を返してくれています。
優作と藍は、しっかり者です。「困った時に」と渡していた3万円も使わないまま持っていた。勉強の面でも手がかからなかった。聖志が4歳の時、聖志のために50万円で買った英会話教材のテープを車で流していたら、優作と藍が先に覚えるほどでしたから。
優作ですが、来年プロに転向します。おかげさまで、大学2年からはプロのツアーでトップ10に入り、周囲から期待される存在になりました。先日のアジア・ジャパン沖縄オープンも2位。しかし「アマのうちにプロツアーで1勝」のノルマは果たせなかった。「まだ甘い」の一言です。
ただ優作には大きな可能性を感じています。小学6年で68を出し、ホールインワンを記録しましたが、慢心しなかった。常に上を目指しています。来年は04年米ツアーの予選会にも出るといいます。「タイガー・ウッズが若いうちに勝ちたい」が口ぐせですから。
その上で私と妻に夢があります。息子が出場する「マスターズ」を見にいくことです。今年の全英オープンには聖志が出場し、私たちを英国にファーストクラスで連れていってくれましたが、マスターズはどちらが先でしょうか。
藍も含めて将来は3人とも米ツアーでプレーを希望しています。私はそうなってもサポートしていくつもりです。ゴルフに終わりはなく、錯覚のスポーツでもあります。自分だけではスイングの修正点は見つけられない。幸い素直に育った子供たちです。私も一緒に世界で戦おうと思っています。
父・優氏 村長落選、ティーチングプロ
優氏は、1946年(昭和21年)5月24日、沖縄県生まれ。高校時代には陸上やり投げで沖縄県大会優勝したスポーツマンで、沖縄県庁に就職。東村職員を経て、87年に東村長選へ出馬するが落選。2年後、43歳にしてゴルフティーチングプロ資格試験に合格した。ゴルフは29歳で始めたが、人から教わることがなく「ゲーリー・プレーヤーの連続写真」などを教材に、研究し続けることで理論を構築した。
3兄妹や、ジュニアへの指導法は体形や筋力などを分析して作製したスイングプレーン(軌道)を正確になぞらせることを主にしている。フォームをビデオで撮影して、よければ褒めちぎる。一方、マナー面で問題があると、鉄拳も辞さなかったという。
低迷するゴルフ界への問題意識も高く「全国的にジュニア育成へ力を入れるべき」と強調する。「金がなくてもゴルフができる環境づくりが必要。ジュニアにゴルフの楽しさを教えれば大人になっても続ける。そして誰かがメジャーを取れば、もっと夢は広がる」と話している。
沖縄でトレーニングを積み、開幕戦東建ホームメイド杯に備える。将来は米ツアー挑戦も見据えているが、まず3年連続シード権獲得を目指す。現在は優氏の下、前向きにスイング改造へ取り組んでいる。優氏から与えられたノルマは「賞金5000万円以上の獲得」。過去のツアー成績は2位が最高で、本人も「優作より先に優勝する」と意気込んでいる。
◆宮里聖志(みやざと・きよし)
1977年(昭和52年)2月28日生まれ。大阪桐蔭高から近大進学も3年で中退。99年プロテストに4位で合格。00年のツアー最終予選会は12位通過。01年賞金ランク65位で初シード権獲得。02年は賞金ランク27位。166センチ、84キロ。
ソニーオープンに出場後は帰国。3月には東北福祉大のオーストラリア合宿にコーチとして参加する。4月から日本ツアーに出場するが、規定から主催者推薦の6試合に限られる。6試合の中で5位以内に入れば、翌週の試合にも出場できる。一方で04年米ツアー予選会にも出場予定。優氏からのノルマは、限られた試合で日本ツアーのシード権を取ること。
◆宮里優作(みやざと・ゆうさく)
1980年(昭和55年)6月19日生まれ。大阪桐蔭高から東北福祉大へ進学。94、98年日本ジュニア選手権、00、01年日本学生選手権、01年7月の日本アマ選手権優勝で日本タイトル3冠。高校3年で世界ジュニア選手権も制した。169センチ、73キロ。
高校3年の来年も全国高校選手権、日本女子アマ選手権などに出場する中、女子ツアー競技にチャレンジする予定。卒業後にプロ転向の可能性もある。優氏によれば「スイングがある程度できあがっている」。一方で「考えるゴルフ」を課題にしている。ラウンド4時間でショットの時間は20分程度。トラブルになった際の対処法を最大のテーマにしている。
◆宮里藍(みやざと・あい) 1985年(昭和60年)6月19日生まれ。99、00年全国中学校選手権連覇。01年東北高に進学し全国高校選手権個人は01、02年と2連覇。02年日本女子アマ選手権4位、02年アジア大会個人の部では金メダルを獲得。154センチ、53キロ。
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