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  スポーツNOW(7月9日付)
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北島「止まらない」新泳法で金メダル目指す!

金メダルを目指す北島
金メダルを目指す北島

 世界記録へのキーワードは「止まるな!」。日本競泳陣は今日9日、スペイン・ジローナで世界選手権(13日開幕、バルセロナ)直前合宿に入る。日本競泳陣のエース北島康介(20=東京SC、日体大)は50、100、200メートルの平泳ぎ3種目に出場。世界記録のカギは足を引き付ける瞬間の「進行停止時間」をいかに縮めるか。「速く泳ぐ」ことよりも「止まらない」こと。これが、世界選手権とアテネ五輪金メダルへの近道となる。

 速く泳ぐより止まらないこと。平泳ぎは競泳の4泳法の中でも特殊だ。手をかいた後、足を引きつける動作の時に「止まる」。引きつける足が抵抗となり、推進力を0にするのだ。実際に泳いでみれば、この「止まる」感覚が分かるはず。もちろん、クロールやバタフライなどに「止まる」ところはない。「進行停止」と言われる独特の状態を克服することが、平泳ぎで世界を制するカギとなる。

 「北島の記録更新は、進行停止の短縮の歴史」と、日本水連の河合正治競泳委員は話す。97年、中学3年で全国中学大会を制した時の泳ぎを解析すると、1ストローク当たりの停止時間は0秒16だった。当時は100メートルのストローク数が50以上だったから、1レースで0秒16×50。約8秒も止まっていたことになる。世界トップの停止時間は0秒07前後。0秒07×50=3・5秒。停止時間で4・5秒も差ができた。

 「こんな泳ぎなら辞めた方がいい」と怒鳴った河合氏だが「もし停止時間を短くできれば」とも考えた。97年当時、仮に停止時間が0秒07だったら、すぐに世界と戦えた。泳ぎは超一流だった。河合氏と北島、平田伯昌コーチは何度もビデオを見て話し合った。「停止時間」克服が始まった。

 足を引く動作を変えた。(1)浅く引く(2)速く引く。この2点を徹底した。かかとが大きく腰の幅より出ていたキックを、(3)腰の幅内で蹴るように修正した。それまで開いた足の間にできる不正な流れが推進力を弱めていたが、水流がきれいに体の横を通るようになった。さらに(4)ストローク数を減らした。1回の停止時間は同じでも、回数が減ればトータルの停止時間は短くなる。キック後の「のび」で抵抗を少なくし、速度を落とさず進む距離を伸ばす。1ストロークあたりの距離が伸びれば回数を減らせる。

北島の100メートル平泳ぎのタイムと停止時間
大会 タイム 停止時間
97 全国中学大会 1分5秒54 0秒16
98 高校総体 1分3秒00 0秒12
99 日本選手権 1分2秒73 0秒12
00 日本選手権 1分1秒31 0秒10
01 世界選手権 1分0秒61 0秒07
03 世界選手権

 北島は河合氏から与えられた課題を1つずつ克服した。「技術を身につけるのは天才的に早く、うまかった」と河合氏は振り返る。01年世界選手権では世界トップレベルの0秒07まで来た。ストロークも100メートルで50以上から40程度まで減少。「止まる」時間は、飛躍的に少なくなった。

 「200メートルは2分8秒台、100メートルは59秒台」と、北島は再度の世界記録を宣言している。河合氏も「停止時間をもっと短くして、腕のかきを強化すれば、来年のアテネ五輪では10年は持つ記録を出せる」と太鼓判を押した。「止まらない」北島が世界選手権でさらなる進化を見せる。【田口潤】

 ◆北島康介(きたじま・こうすけ) 1982年(昭和57年)9月22日、東京都荒川区生まれ。シドニー五輪は平泳ぎ100メートルで4位、01年世界選手権200メートルで銅。昨年10月のアジア大会200メートルで2分9秒97の世界新をマークしたが、6月にコモルニコフ(ロシア)に2分9秒52と塗り替えられた。100メートルのベストは4月の日本選手権で出した1分0秒07で、スロードノフ(ロシア)が持つ世界記録59秒94に次ぐ世界歴代2位。177センチ、71キロ。


 ◆世界選手権のみどころ 男子平泳ぎの北島康介は200、100メートルの2種目で金メダルを狙う。女子400メートル自由形の山田沙知子、同200メートルバタフライの中西悠子は今季世界ランク1位記録を持って大会に臨む。シンクロはチームでは初の、立花・武田組のデュエットは2大会連続の金メダルが目標。前回銅メダルの男子3メートル板飛び込み・寺内健も2大会連続のメダル獲得が期待される。外国勢では競泳男子自由形の「ソープVSファンデンホーヘンバンド」などに注目。

努力と工夫がタイム縮める平泳ぎ

 平泳ぎは、日本の「お家芸」といわれた。1928年アムステルダム大会の鶴田義行から92年バルセロナ大会の岩崎恭子まで、どの泳法よりも多い6人が五輪金メダルに輝いている。パワーや手足の長さが武器となるクロールやバタフライは体格に劣る日本選手に不利。しかし、平泳ぎは努力と工夫でタイムを縮めることができるからだ。

 56年メルボルン五輪金の古川義行は、潜水泳法で世界新を連発。後に禁止されたのは、古川があまりに完ぺきに泳いだためといわれた。田口信教は蹴り下ろすようにキックする「田口キック」を発明。ドルフィンキックとみられて失格も経験したが、72年ミュンヘン五輪で金メダルに輝いた。

 高橋繁浩は、常識を覆す大きなストローク泳法で活躍。「常に体の一部が水面から出る」という当時のルールで水没失格に苦しんだが、78年世界ランク1位となった。その後も多くの平泳ぎ選手が体格と体力のハンディを克服し世界レベルで活躍している。北島は現在、スタート時の入水角度改良にも着手している。コンマ数秒を縮める努力と工夫は、五輪本番まで続く。

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