アテネ五輪マラソンコースは高低差210メートルに「三重苦」

スタート地点はアテネ北東の閑静な村「マラトン」の一角。ここからアテネに至る道が「マラソン通り」
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アテネ五輪マラソンコースには「三重苦」が隠されていた。108年ぶりに「発祥の地」に戻る五輪開幕まで、今日13日でちょうど1年。注目のマラソンは1896年の第1回近代オリンピックとほぼ同じコース、競技名の由来になったマラトン村からアテネ市に至る42・195キロで行われる。このほどコースを取材した本紙記者は、真夏の「酷暑」に加え「野犬」と「大気汚染」が選手を待ち受ける大敵と指摘した。
平たんな道が続いた後に断続的な上りが始まる18キロ地点だった。コース横の草むらから突然、野良犬が顔を出した。その後、同じシーンが連続する。20キロ地点までの約2キロで10匹以上。しかもすべてがドーベルマン、シェパード、ポインターといった1メートル以上の大型犬ばかりだった。ふと見るとコース横には「野犬注意」の標識が立っていた。

野犬多発地帯 左右の丘にはぶどう畑が広がる
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アテネ市街でもあちこちをうろつき回り、アスファルトにべったりと寝そべった大きな野犬が目に付いた。ギリシャ人は大型犬を好む。しかし、ふんの処理をしないなど公共意識はかなり低いという。飼うのが嫌になれば捨ててしまう人も多い。そんな捨て犬、野犬はアテネ市内だけでも数万匹はいるという。
「政府は野犬対策には無関心のようです」と日本大使館関係者。さすがのマラソンランナーも犬の走るスピードにはかなわない。凶暴なものは少なく、おとなしい犬が多いとはいわれている。だが、五輪マラソンという普段とは違う雰囲気に興奮状態になり、かみつくなど選手の走行を妨げるようなことになれば大変なことになる。
野犬だけではない。焼けつくような太陽も難敵になる。スタート時間は男女とも午後6時だが、甘くみてはいけない。昼の長い夏のギリシャでは日没が午後9時前。西から東に進むランナーはスタートから後頭部に真夏の日差しを受け続けることになる。予想気温は40度近い。路面温度は50度を超える。五輪組織委員会は5キロごとに給水所、簡易シャワーを設置することを決めた。熱中症対策として体をいかに冷やすか、また水分補給がレースのカギを握るに違いない。
勝負どころの40キロ付近、アテネ市街に入ると車の排ガスが気になる。同市にはギリシャの人口の3割が集中する。大気汚染、交通渋滞は深刻な問題。政府は曜日と車のナンバーによって市街地への乗り入れを規制しているが効果はない。もともと年間300日以上は快晴といわれる国。ただでさえ空気はカラカラだ。世界水泳(7月、バルセロナ)後に現地を視察した北島康介(20=東京SC)も「何か砂っぽい」というほど空気は汚れている。本番では当然交通規制が敷かれるだろうが、ランナーも覚悟しなければならない。

いまだあちこちで道路工事中のマラソンコース。前を走るトラックの砂塵で視界が悪い
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もちろん、マラソン発祥のコースそのものも簡単ではない。前半10キロはほぼ平たん。その後、18キロから32キロ付近まで上り。そしてラスト10キロ余りはだらだらと下りが続く。スタート地点は海抜25メートル。最高点の30キロ付近は240メートル。高低差が約210メートルもあるコースは世界でも珍しい。アップダウンを克服する技術、体力が必要なのは言うまでもない。【田口潤】
尚子米ボルダ−で高地トレ中 五輪連覇を目指す高橋尚子(31=スカイネットアジア航空)の「アテネ攻略」はすでに始まっている。佐倉アスリートクラブの小出代表は積水化学監督時代の97年、アテネで行われた世界選手権女子マラソンで、鈴木博美を金メダルに導いた実績を持つ。「勝負は32キロまで。そこからは下りだからね。スタート時間は夕方だけど、気温は落ちない。でも、Qちゃんは暑さにも強いから面白いレースになるよ」。攻略法は心得ている。
実は、高橋自身もアテネのコースを視察済みだ。97年世界選手権はトラックでの出場だったが、先輩鈴木のレース時はしっかり沿道から声援を送っていた。その後、鈴木の金メダル獲得に刺激されて高橋もマラソンを始めたというのは有名な話だ。アテネは「マラソンランナー高橋」の原点といっていい。

全体的にアップダウンが多いコースにあって、中間地点手前付近にはやや長い下り坂がある
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五輪開幕1年前は米国で迎える。代表選考レース、11月の東京国際に向け、米国ボルダーで高地トレを行っている。五輪連覇を狙う高橋も選考会の突破なくして、アテネロードは始まらない。高速化に備え、9月にはマラソン転向後初のトラック練習もメニューに組み込まれるという。
会場も選手村もすべて工事中 新築や改修で、完全に仕上がった競技場は1つもない。メーン会場の五輪スタジアム、競泳プールはもちろん、選手村も工事中。五輪スタジアムの完成予定は当初の12月から本番直前の来年6月に延長され、国際オリンピック委員会(IOC)から準備遅れを指摘されている。
長野五輪で1年以上も前に会場を完成させた日本人とは対照的な欧州の「リズム」があるが、ギリシャには、それ以上に深刻な問題がある。工事で土を掘ると、古代の遺物、美術品が出土する。その都度、考古学の専門家が調査するため、工事が止まってしまう。地下鉄駅には工事時の出土品などを展示するコーナーがあるほどだ。IOCの指摘に、アテネ五輪組織委員会のアンゲロプロス会長は「遅れがあるのは認める。時間的余裕がないのも確か。だが間に合うと自信を持っている」と話す。今はその言葉を信じるしかない。

来年の開幕に向け、急ピッチで工事が進むアテネ五輪の会場。手前は開閉会式などが行われる五輪スタジアム
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◆1年前式典なし 普通ならにぎやかな祝福の歓声につつまれた五輪1年前、アテネは工事の騒音だけが鳴り響く。バコヤンニ・アテネ市長は「いろいろ考えた結果、特に催しはしない」と1年前の式典をしない方針を示した。五輪組織委員会もアテネでのイベントを計画せず、クレタ島のイラクリオン、北部のテッサロニキなどサッカー会場の地方4都市で演奏会を催す。シミチェク組織委常務理事は「長期休暇でアテネから多くの人がいなくなる8月に式典をしても無駄」と説明した。
◆環境五輪守られず 環境保護団体グリーンピースは12日、アテネ五輪についてギリシャの環境問題を考えて改善できたにもかかわらず、その好機を失ったと主張した。車社会のアテネで、地下鉄や鉄道、路面電車を建設することは市民生活の向上につながる、と成果も挙げた。しかし、政府や五輪組織委員会は招致段階から環境問題に気を使うと公言しながら、ほとんど約束を守らず、評価の高かったシドニー五輪の遺産を継承しなかったと酷評した。開幕までの1年では選手村に太陽光利用設備を設置するなどの象徴的な施策しか取れず、それも政府関係の強い働きかけがあって実現すると結んだ。
◆豪州独自テロ対策 オーストラリア五輪委(AOC)のコーツ会長は12日、来年のアテネ五輪期間中、安全確保のために同国の警備隊を派遣し、選手に選手村からの外出を禁止するなど、独自のテロ対策を考慮していることを明らかにした。
ギリシャ&アテネ
国土は13万1990平方キロで、日本の約3分の1。バルカン半島南端の本土とエーゲ海、イオニア海、地中海の島々からなる。人口1094万人のうち首都アテネ周辺に約340万人が暮らす。公用語がギリシャ語で、宗教はギリシャ正教。
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