五輪で唯一男女の区別なし!馬術の加藤麻理子がアテネで雪辱果たす
馬術の華、障害飛越種目で、日本初の女性五輪代表が誕生するか!? すべての種目で男女の区別がない唯一の五輪競技馬術で、最もアテネに近い女性騎手が加藤麻理子(31=ライディングクラブ・アルカディア)だ。6月にドイツで行われた障害飛越予選会で、代表ただ1人の女性としてアテネ五輪団体および個人出場枠の獲得に貢献した。前回シドニー五輪は、選考会の最後の障害で転倒し代表入りを逃した。その雪辱を、愛馬スポートナント号とともにアテネで果たす。
4年前は落馬
今でも加藤は、4年前の悪夢を忘れていない。シドニー五輪代表選考会の最終障害で転倒。加藤は落馬し、その瞬間、目の前にあった障害飛越初の日本女子代表の座は消し飛んだ。「ショックで、競技生活をやめようと思いました。でも、あれが実力だったんです」。アテネは、その雪辱の場所でもある。
馬術は、すべての種目で男女の区別がない唯一の五輪競技だ。その中で女性が男性を上回るには「馬を操る繊細さ、気持ちを通わせる精神的な部分や経験で対抗するしかない」ほど、至難の業だ。馬の動きの美しさを競う馬場馬術では、女性の躍進はめざましい。パワーを使わないため、88年ソウル大会でメダルを独占するなどの快挙があった。
ドイツが拠点
しかし、障害飛越は、馬をジャンプさせるパワーが必要で、女性には最も難しい種目とされる。世界的にも女性騎手自体が少ない。その中で、五輪での金メダルなど「聞いたことがない」(日本馬術連盟)というほどだ。メダルも、68年メキシコシティーでの銀、96年アトランタの銅と、数えるほどしかない。
しかし加藤は、そのハンディを乗り越えるため、すべての時間を馬にささげる。ドイツ・ハンブルク郊外を拠点とし、欧州の競技会を転戦。腕を磨くのと同時に「馬の目を見て意思を伝えられる。常に馬と一緒にいるから、趣味なんて持てない」と、いっときたりとも愛馬の世話を欠かさない。
五輪で戦える馬を探すのにも、1年以上をかけた。月にかかる経費は、馬3頭で、維持費やトレーナー費などを合わせ安くて500万円弱にもなる。その資金をひねり出すために、企業や資産家のスポンサー探しにも時間を費やす。まさに人馬一体。そこまでして初めて、男性と互角に戦える。
加藤には、五輪以上の夢がある。世界馬術競技の最高峰スプールスメドウズ大会での好成績だ。「その前にアテネは絶対に欠かせない。出られないなら、スプールスメドウズなど夢のまた夢」。加藤は、その夢の実現のため、まず男性と五輪という大きな障害に立ち向かう。【吉松忠弘】
◆加藤麻理子(かとう・まりこ) 1972年(昭和47年)7月25日、東京都生まれ。5歳で乗馬を始め、85年史上最年少で全日本障害ジュニア選手権優勝。91年女性最年少で全日本中障害選手権に優勝し、93年から単身スイスに拠点を移す。99年には世界最高峰の馬術競技スプールスメドウズに、日本人史上2人目として招待される。00年国別対抗戦ネーションズカップで3位に入賞した。松蔭女子短大卒。ドイツ在住。163センチ、45キロ。
◆アテネへの道 障害飛越は、6月の予選会で団体出場枠と個人出場枠4を獲得。代表は、来年4月から6月に欧州で行われる国際競技会での成績と内容で選ばれる。シドニー五輪では、代表選考競技会を開催したが、今回は行われない。
◆障害飛越 馬場内に置かれた高さと幅のある障害物を、決められた順に制限時間内でクリアする種目。障害物にはいくつか種類があり、数や高さと幅は、難度により7段階に分かれる。五輪で使われるのは、障害物13個以内で、1つが高さ160センチ以内、幅180センチ以内の最難度のS級Aというクラス。採点は、障害物を落下させたり、馬が逃避や止まったりすることで減点される得点法と、減点をタイム換算して走行タイムを競うスピード・ハンディネスがある。経路の全長は500〜700メートル。
◆世界の馬術の現状 ドイツが最も強く、シドニー五輪でも馬場と障害飛越の団体で金メダルを獲得。個人でも、馬場で銀メダル、銅メダルを各2個ずつ獲得した。ドイツは、乗馬用の馬の生産でも世界一の規模を誇り、年間3万5000頭にもなる。ドイツに続くのが、オーストラリア、米国、英国などで、オーストラリアはシドニーで総合馬術団体金メダルに輝いている。日本は、32年ロサンゼルス大会障害飛越個人で西竹一が金に輝いたのが、唯一のメダルだ。最近では、92年バルセロナ、96年アトランタと、2大会連続で総合馬術団体で入賞を果たした。
◆性別のないスポーツ 五輪競技で、最も早く男女の区別がなくなったのは24年パリ大会のヨット競技。52年ヘルシンキ大会で馬術が続いた。アテネ五輪で実施される競技で男女の区別がないのは、馬術全6種目とヨットのレーザー級、49er級、トルネード級の3種目だけ。クレー射撃は、88年ソウル、92年バルセロナだけ男女の区別がなかった。五輪競技以外では、F1などのモータースポーツ、競艇などがある。
|
障害飛越の日本代表五輪成績
|
| 年 |
開催場所 |
団体 |
個人 |
| 28 |
アムステルダム |
− |
失権 吉田重友 |
|
|
|
| 32 |
ロサンゼルス |
− |
1位 西 竹一 |
失権 今村 安 |
|
|
| 36 |
ベルリン |
6位 |
14位 岩橋 学 |
20位 西 竹一 |
35位 稲波 弘次 |
|
| 52 |
ヘルシンキ |
− |
45位 喜多井利明 |
|
|
|
| 56 |
メルボルン |
− |
26位 川口宏一 |
30位 太田邦宏 |
|
|
| 60 |
ローマ |
15位 |
29位 太田邦宏 |
失権 影山祐三 |
|
|
| 64 |
東京 |
12位 |
38位 佐々信三 |
40位 法華津寛 |
失権 影山祐三 |
|
| 68 |
メキシコシティー |
14位 |
26位 杉谷昌保 |
26位 福島 正 |
失権 荒木雄豪 |
|
| 72 |
ミュンヘン |
16位 |
42位 竹田恒和 |
43位 杉谷昌保 |
43位 福島 正 |
|
| 76 |
モントリオール |
13位 |
30位 東良弘一 |
39位 竹田恒和 |
42位 小畑隆一 |
|
| 84 |
ロサンゼルス |
11位 |
14位 陶器修一 |
34位 中野善弘 |
46位 戸村 崇 |
|
| 88 |
ソウル |
失権 |
42位 中野善弘 |
51位 陶器修一 |
65位 奥野竜三 |
67位 沢井孝夫 |
| 92 |
バルセロナ |
13位 |
33位 東良弘一 |
38位 戸村 崇 |
39位 奥野竜三 |
49位 富沢宏介 |
| 96 |
アトランタ |
15位 |
38位 白井 岳 |
59位 中野善弘 |
64位 杉谷泰造 |
80位 森本健史 |
| 00 |
シドニー |
11位 |
25位 杉谷泰造 |
37位 白井 岳 |
44位 林 忠義 |
66位 広田竜馬 |
|
|
障害飛越アテネ五輪代表候補
|
| 氏名 |
年齢 |
所属 |
主戦馬 |
産国 |
主な成績 |
| 林 忠義 |
35 |
北総乗馬クラブ |
スワンキー |
アイルランド |
シドニー五輪個人42位 |
| 杉谷泰造 |
26 |
杉谷乗馬クラブ |
ラマルッシ |
オランダ |
アトランタ五輪代表、シドニー五輪個人25位 |
| 広田龍馬 |
26 |
那須トレーニングファーム |
ゼロ |
オランダ |
シドニー五輪個人66位 |
| 桝井俊樹 |
33 |
乗馬クラブクレイン |
アーネスト |
フランス |
02年世界選手権代表 |
| 加藤麻理子 |
31 |
RCアルカディア |
スポートナント |
ベルギー |
ピネロロGP6位入賞 |
| 板倉祐子 |
31 |
東京都馬術連盟 |
ポートフリート |
ドイツ |
ラバグナイアGP4位入賞 |
| 渡辺祐香 |
35 |
ヤマハつま恋乗馬倶楽部 |
リベロズ・ルシィール |
オランダ |
− |
|
|