男子マラソンエース高岡、五輪メダルへピッチ走法完成!
男子マラソンのエース高岡寿成(33=カネボウ)が、わずか10センチの改良で04年アテネ五輪代表の座を射止める。7日の福岡国際マラソン(平和台陸上競技場発着)を皮切りに五輪代表選考が幕の切って落とされる。2時間6分16秒の日本最高記録を持つ高岡は、課題だったストライド走法からピッチ走法への移行がほぼ完成。歩幅を約10センチ短くしたことでフォームが安定し、終盤のペースダウンもなくなった。低迷する日本男子の復活へ「ニュー高岡」がベールを脱ぐ。
ブレなくなる
約10センチの短縮で後半のスタミナロスが防げる。ストライド(歩幅)の話だ。トラック時代の高岡は日本人離れした平均2メートルのストライドを武器に日本記録を総なめにした。だが、186センチの長身で、全身のバネを使うフォームは42キロの長丁場には不向きだった。スタミナが持たない。発展途上で挑んだ01年福岡、02年シカゴでは30キロすぎまで世界最高ペースも、後半ペースダウンした。「ストライド走法→ピッチ走法」は、マラソンを目指す上で避けては通れない道だった。
ゴールは見えてきた。伊藤国光監督はいう。「マラソン練習を重ねると左右の肩のブレ、体のねじれが消えた。距離を踏むことで自然と余分な動きがなくなったんです。トラック時代に比べれば、歩幅は10センチ単位で狭くなっているかもしれません」。マラソン挑戦3年目。7日の福岡国際に向け、40キロ走は過去最多の9回もこなした。これほど入念に準備したのは初めてだ。練習はウソをつかなかった。
186センチを生かす
わずか10センチがアテネヘ、世界へつながる。高岡のコンディションを管理する三重大・杉田正明助教授は「太ももの表の筋肉が強いのが特徴。天性です。大きく足を広げてからの着地に順応できるので豪快なストライドを可能にする。でも、この筋肉の欠点は長持ちしないこと。最近は歩幅が小さくなり、持久力のある太もも裏の筋肉が使えるようになりました」。同助教授の手元には、引退するまで「企業秘密」と約束する膨大なデータがあるという。数値は、フォームの変化と持久力の向上を示していた。
むろん、長所は消えていない。世界のマラソン界を見渡してもめったにお目にかかれない長身が生みだす歩幅は大きな武器だ。元来2メートル近いものが約10センチ縮まっても、平均1メートル80〜90センチとなる。典型的なピッチ走法で91年世界陸上を制した谷口浩美の歩幅は124〜155センチだから、高岡の走りは規格外といえる。ある関係者は高岡の走りをピッチ走法ではないと主張する。それは改良後の歩幅も十分に大きいからだ。つまり、ストライド走法のいい部分を残しながらのピッチ走法へ移行するのが高岡流の改良だった。
高岡は「福岡では確実に代表になるレースをしたい。1キロ3分ペースで余裕を持って走りたい」と話す。後半に失速した過去2戦と比べ、明らかに進化したフォームへの自信がほとばしる。仮に1キロ3分で走り着れば2時間6分35秒でゴール。日本最高を記録したシカゴの中盤までの走りが最後まで続けば…。アテネ切符は間違いない。日本男子マラソンにも光が差す。【牧野真治】
◆高岡寿成(たかおか・としなり)
▽生まれ 1970年(昭和45年)9月24日、京都府山城町のお茶加工販売店の長男として誕生。
▽野球少年 京都・上狛小時代は野球部の投手と遊撃手。小5で町内のマラソン大会に優勝し陸上に興味を持つ。山城中では1日で野球部を辞め陸上部に。
▽箱根嫌い 洛南高時代は無名のランナー。2年のとき、高校総体の近畿予選5000メートルで11位。「箱根重視」の関東を嫌い、龍谷大へ進学。
▽4冠 現在、3000メートル(7分41秒87)5000メートル(13分13秒40)1万メートル(27分35秒09)の日本記録、マラソンの日本最高記録を持つ。世界選手権4度、五輪2大会で代表。
▽家族 直子夫人(33)環伍くん(3)。186センチ、64キロ。B型。
◆ピッチ走法 ストライドを身長よりも狭くし、一定期間のピッチ(足の運び)を速くする方法。瀬古利彦、佐藤敦之、女子では高橋尚子、千葉真子ら。
◆ストライド走法 ストライドを大きく、ピッチを少なくする走り。スピードが要求される場合に用いられる。脚筋力が必要。中山竹通、女子ではラドクリフら。
前傾が消えた
トラック時代から高岡の分析を続ける兵庫・洲本実の出口教諭は、姿勢の変化に着目していた。「明らかに変わりました。頭の位置が約1〜3度、上に向き、以前の前傾が消えました」と話す。これは無理にでもストライドを伸ばそうとする力が抜けたことを意味している。これもトラック時代のフォームから、ピッチ走法への変化を裏付ける証言だった。
心も体もマラソン向き
心・技・体の「技」は進化したフォームだ。だが、高岡の強さはそれだけではない。心と体も高いレベルで充実している。
「自分を信じて疑わない。高岡の強さは、そこに尽きます」と伊藤監督。9月のベルリンで2時間4分55秒の世界最高を記録したテルガト(ケニア)はトラック時代からの親友。年齢は高岡より1つ上、長身、細身でトラック出身と、共通点が多い。昨年のシカゴでは直接対決にも勝った。だから、テルガトにできるなら自分にも、と信じている。
体もマラソン向き。伊藤監督によれば、疲労度のバロメータとなる乳酸値が他の日本選手よりも低いという。「アフリカ勢には劣りますが日本レベルでは抜けてます。持って生まれた資質があります」と同監督。つまり練習量、調整具合、勝負の駆け引き以前に日本人以上、アフリカ人未満のスタミナを持ち合わせているのだ。
◆日本男子マラソン 五輪では92年バルセロナで森下広一が銀メダルを獲得して以来、入賞もない。96年アトランタでは谷口浩美の19位が最高。その後、初のナショナルチーム体制を敷き、抜本的な強化策に乗り出した。99年世界陸上セビリア大会で佐藤信之が銅メダルを獲得し、一応の成果をみせるが再び低迷。00年シドニー五輪では川嶋伸次の21位が最高。8月の世界選手権(パリ)では油谷繁の5位が最高。高岡の2時間6分16秒は世界歴代7位。
代表枠は「3」、油谷がリード
◆アテネ五輪男子マラソン代表選考 7日の福岡国際、来年2月の東京国際、同3月のびわ湖毎日が国内選考レースで代表枠は「3」。現在、8月の世界選手権(パリ)5位の油谷繁(中国電力)が1歩リード。今後の展開で国内選考に出場するか、判断する。3月のびわ湖には前日本記録保持者の藤田敦史(富士通)、若手ホープの藤原正和(ホンダ)らが出場予定。
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アテネ五輪を目指す男子マラソン有力選手
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| 予想 |
選手名 |
年齢 |
出身 |
身長、体重 |
所属 |
自己ベスト |
予想選考レース |
ひとこと |
| ○ |
(あぶらや・しげる) 油谷 繁 |
26 |
山口 |
163、51 |
中国電力 |
2・7・52 |
04年2月 東京国際 |
8月の世界選手権5位。 安定感はNO・1 |
| ◎ |
(たかおか・としなり) 高岡 寿成 |
33 |
京都 |
186、64 |
カネボウ |
2・6・16 |
03年12月 福岡国際 |
日本最高記録保持者。 186センチの長身生かす |
| △ |
(おがた・つよし) 尾方 剛 |
30 |
広島 |
165、50 |
中国電力 |
2・9・15 |
03年12月 福岡国際 |
昨年も日本人首位の福岡は相性○。 苦労人 |
| △ |
(さとう・あつし) 佐藤 敦之 |
25 |
福島 |
170、55 |
中国電力 |
2・8・50 |
04年3月 びわ湖毎日 |
早大3年のびわ湖で学生最高。 エース候補 |
| |
(ふじた・あつし) 藤田 敦史 |
27 |
福島 |
166、52 |
富士通 |
2・6・51 |
04年3月 びわ湖毎日 |
前日本最高記録保持者も近年故障が目立つ |
| |
(ふじわら・まさかず) 藤原 正和 |
22 |
兵庫 |
167、54 |
ホンダ |
2・8・12 |
04年3月 びわ湖毎日 |
3月びわ湖で初マラソン日本最高デビュー |
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(おじま・ただゆき) 小島 忠幸 |
27 |
兵庫 |
174、59 |
旭化成 |
2・9・10 |
03年12月 福岡国際 |
名門・旭化成の復活なるか。 スピードあり |
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(いわさ・としひろ) 岩佐 敏弘 |
27 |
徳島 |
172、57 |
大塚製薬 |
2・10・17 |
03年12月 福岡国際 |
マラソンでの実績は不足もスピードは十分 |
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(しみず・こうじ) 清水 康次 |
34 |
広島 |
176、52 |
NTT西日本広島 |
2・8・28 |
04年2月 東京国際 |
所属先の支援も延長。 今年びわ湖で自己新 |
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