綱とり栃東が絶好スタート/春場所
<大相撲春場所>◇初日◇12日◇大阪府立体育館
綱とりに挑む大関栃東(29=玉ノ井)が、絶好のスタートを切った。新小結露鵬(26)の低い攻めをしのいで押し出した。緊張が目立った過去2度の横綱挑戦場所とは違い、文句なしの内容だった。横綱朝青龍(25)ら上位陣は安泰だったが、かど番の大関魁皇(33)は黒星スタートとなった。
不退転の決意で攻めた。立ち合い。栃東は露鵬の低い当たりを胸で受けた。相手をうまく起こせなくても焦りはなかった。「引いたら絶対ついてこられる」。自分の身上であるおっつけで、下からしつこく攻め続けた。逆にしびれを切らした露鵬の引きに乗じて、すきを逃さず前に出た。最後はもろ手突きで152キロを土俵下にふっ飛ばした。
勝ち名乗りを受けて土俵を下りると、力水をひしゃくですくって口に運ぶ。カラカラに乾いたのどを潤した。「やっぱり多少の緊張はあった」。綱とり初日の大事な一番。2度目の横綱挑戦だった04年初場所の初日は、体が動かず若の里に寄り切られた。だが今回は押しつぶされることなく、重圧に打ち勝った。父で師匠の玉ノ井親方(元関脇栃東)は「緊張は(過去2度の挑戦場所と)全然違う。リラックスできている。今までやってきた総決算だ」と全幅の信頼を寄せた。
心技体すべてが充実して迎えた今場所。前夜には、出陣前の最後の「儀式」を行った。宿舎のある大阪市西淀川区の田蓑神社の境内で、栃東は祈っていた。本場所で使う黒の締め込みを神前に供え、自ら清めの塩をふった。「けがせず場所を終えられますように」。静かに祈りをささげた。一夜明けたこの日朝には、宮司からおはらいを受けた。やるだけのことはやった。だからもう、迷いや焦りはなかった。
支度部屋では表情が緩んだ。「初日が終わってまずは良かったって感じ。ひと安心ってわけじゃない」。言葉とは裏腹に、細い目をさらに細めて笑みを浮かべた。放駒審判部長(元大関魁傑)は「自分の相撲を取った。出だしとしてはいいんじゃないか」と話す。三度目の正直へ、栃東が大きな1歩を踏み出した。【太田尚樹】
[2006/3/13/09:19 紙面から]
写真=幸先のいいスタートに笑顔がこぼれる栃東
|