魁皇あきらめない8敗までやる/春場所
<大相撲春場所>◇6日目◇17日◇大阪府立体育会館
かど番の大関魁皇(33=友綱)が「いばらの道」を選んだ。黒海(25)にはたき込まれて4敗目を喫し、打ち出し後に師匠の友綱親方(53=元関脇魁輝)と進退について話し合ったが、今場所で負け越さない限り現役続行することを直訴して認められた。潔くあきらめることを良しとせず、不格好でも最後まであがくことを決めた。全勝は横綱朝青龍(25)と大関とりの白鵬(21)の2人。綱とりの栃東(29)は1敗を守った。
最後の最後まであきらめない。魁皇が選んだのは、最も厳しい道だった。4敗目を喫した打ち出し後、宿舎で師匠の友綱親方に直訴した。
「このままじゃ、集大成を見せられない。持っているものを全部出したい。(今場所で)負け越した時点で引退します」。
引退をうながした師匠に従い、潔くあきらめる道もあった。だが、大関としてのプライドをかなぐり捨て、泥水を飲む覚悟を訴えた。午後7時から始まった話し合いは、5分で終わった。友綱親方は報道陣に対し「本人の強い意志を感じた」と説明した。
この日もぶざまに敗れた。生命線の右上手が取れず力任せに黒海を押し込んだが、とっさに引いた相手に足がついて行かなかった。ファンの悲鳴とため息とともに、前のめりに崩れ落ちた。「しまった」。口を開けて痛恨の表情を浮かべたのは一瞬。すぐに口をギュッ結ぶと、手を差し伸べた黒海に「大丈夫」とうなずいて自力で立ち上がった。
支度部屋では詰め腹を切らせるかのように、30人近い報道陣に包囲された。それでも伏し目だった視線を少し上げ、いつもながらの小声に力を込めた。
「自分としてはできるところまでやらないと、簡単にあきらめるわけにはいかない。このまま終わるのもどうかと思う。できればもう少し、頑張ってみたい」。
本人とファンの熱意が、師匠の心を動かした。友綱親方は4敗を目安とし、引退を言い渡すことを決めていた。だが、毎日つづっているブログには「やめないで」というメールが殺到。この日の取組前には「本人の気持ちが伝わってくれば」と、少し考えが変わりかけていた。
横綱大関陣との対戦を残して4敗と、厳しい状況に変わりはない。ただこの日も、土俵上の魁皇には一番の歓声が上がった。「歓声? そういう声は聞こえてくるんで」。今のひそかな目標は「35歳まで現役」。ファンの声援を背に受け、最後の可能性にかける。【太田尚樹】
[2006/3/18/09:55 紙面から]
写真=引き揚げる魁皇
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