豪快右上手これが魁皇/春場所
<大相撲春場所>◇7日目◇18日◇大阪府立体育会館
大関魁皇(33=友綱)が、息を吹き返す白星を手にした。2勝4敗となった前日6日目の夜に師匠の友綱親方(53=元関脇魁輝)から引退勧告を受けたが「負け越したら即引退」と約束して現役続行。その覚悟を示すかのように、得意技の豪快な右上手投げで岩木山を下した。3勝4敗と厳しい土俵は続くが、最後まであきらめない。大関栃東(29)は小結雅山(28)にはたきこまれ、痛い2敗目で綱とりに赤信号。横綱朝青龍(25)と大関とりの関脇白鵬(21)は7連勝した。
腹を決めた男は、力強かった。魁皇は得意の右上手から力づくで岩木山を振り回し、173キロの巨漢を裏返しにした。「立ち合いがよかった。上手投げ? 久しぶりでしょうね」。4敗目を喫した前夜、師匠の友綱親方と進退について話し合い「負け越して大関から落ちれば引退」と決め、この日の土俵に上がった。その表情も、相撲も完全に吹っ切れていた。
この日朝、魁皇はいつもの時間にけいこ場に下り、黙々と体を動かした。進退問題が騒がれた前日は、立ち入り禁止の場所に入った者を付け人が怒鳴るなどピリピリしていた。しかしそんなムードも、腹をくくった魁皇が一掃していた。「まわしを取ってもダメなら潔く」。前日口にした言葉を実践するように、魁皇は自分の形、相撲で4日ぶりの白星を奪った。
「フーッ」。理事室のテレビで見守った師匠の友綱親方は勝った瞬間、誰よりも深い一息をついた。前夜は18年の師弟関係で最も重い瞬間を乗り越えた。「アイツの性格だと、オレが辞めろと言ったら満足してなくてもハイって言いそうだよ。でも4敗したから(引退を)言わなきゃいかん」。しかし部屋に戻ると、5日目までのしょんぼりした弟子はいなかった。魁皇から師匠の元へ出向き、現役続行の強い意思を訴えた。
友綱親方 うれしかったよ。オレを絶対に押し切るという気迫で訴えてきた。いつもはおとなしいヤツが初めて見せる強い決意だもんな。ならば、オレはもう何も言わないと決めたよ。
16歳の時、仲間に誘われ、その気もないのに流されるまま部屋を逃げ出した。そんな危うい魁皇をよく知るだけに、逆に「頼もしい」と思った。大関としてぶざまな相撲が続けば、批判の声もあがる。だが「他人から批判されても、オレは気にせんよ」。師匠も腹をくくっていた。
さらに「体調は悪くない。必要だった気持ちもちゃんとあるんだ。上位陣相手でも何とかなると思う」と信じている。そんな思いに魁皇は応えるだけだ。「とにかく自分の相撲が取りたい。そういう意味でも(今日の相撲は)よかったと思う」。結びつきを強めた師弟の絆(きずな)で、荒波を乗り越えていく。【瀬津真也】
[2006/3/19/09:41 紙面から]
写真=岩木山を上手投げで破った魁皇(撮影・神戸崇利)
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