<楽天インタビュー:西谷尚徳>
楽天にドラフト4巡目で入団した西谷尚徳内野手(22=明大)は、奉仕の心をもった今どき珍しい「慈善ルーキー」だ。母校への恩返しに総額800万円相当の寄付を決め、周囲を驚かせたばかり。「野球人である前に、1人の人間」として日々、心の鍛錬を欠かさない。確実性のある打撃と守備は首脳陣の折り紙付き。一場靖弘投手(22=明大)との同期入団ばかりが注目されてきたが、心技体に充実した「陰の開幕1軍候補」だ。
明大の主将として大暴れした西谷が、プロへの道を切り開いた。昨春は、12季ぶりのリーグ優勝に貢献。大学通算打率は3割3厘、打点27。本塁打は3発だが、いずれも試合を決める印象的な活躍が目立った。ベストナイン3回。好打、鉄壁の二塁手として、エース一場を支えた。楽天でも再びコンビを組む。
西谷「一場は『戦友』です。大学時代のようにマウンドに行って『しっかり投げろよ!』とゲキを飛ばすためにも、厳しいプロの世界で1軍を目指したいです。自分は『陰』でいたから、ここまで来れたと思っています。目立たなくても、仕事をできる選手を目指したいと思います」。
活躍が目立つ大学時代だが、大けがを2度経験した。1年夏にボールが左目に直撃し、顔面を骨折。2年秋には左前腕部を骨折し、腕に10センチのボルトを数十本うめこんだ。選手生命の危機に立たされ、4年春の復活までリハビリと苦悩の毎日を送った。
西谷「左手の握力は10キロまで落ちました。まるで自分の腕じゃない感じ。寒いと痛くて、気温や湿度の微妙な変化で天気が分かるほどでした。野球をやめようかとも思いましたが、打撃のフォームを研究しました。右手主導で、左手の使い方をずっと考えました。おかげで、当てる技術には自信がつきました」。
新人合同自主トレでは、初日(15日)からエンジンを全開。いきなり特守も行い、他のルーキーに比べ「飛ばし過ぎ」という声も出たほどだった。年末年始は、地元の埼玉でソフトボールをつかって練習。プロのは速さに慣れるため、体感速度150キロのマシン相手に打ち込みを重ねた。1日平均6〜8時間も行った。
西谷「集合した時点で競争が始まり、勝負だと思っていましたから。焦るなとか言われましたけど、別にペースが早いわけではないです。(キャンプ前の)今だから、やらなければいけないと思っただけです」。
合同自主トレ会場には新人6人のほか、ベテラン勢も続々と参加。二塁手のライバルとなる高須(近鉄)、佐竹(オリックス)、酒井(中日)らが顔を見せ、大島(オリックス)も加わって激戦のポジション争いが展開されそうだ。
西谷「ノックで高須さんの動きを見ましたけど、ボールさばきが違いますね。尊敬する大島さんもいます。あきらめの悪さと元気で、守備では球際の強さをアピールしていきたいです」。
幼少からの夢をかなえた感謝を行動で示した。母校の埼玉・鷲宮高校野球部グラウンド内野席に約400万円をかけて観戦用の屋根を新設。明大には打撃マシンなど約400万円相当を寄贈。契約金5000万円、年俸800万円(いずれも推定)。年俸と同じ金額分の「恩返し」を決めた。
西谷「野球の道を選ぶことができたのも、指導者やチームに恵まれたからです。自分にとっては、すべてが原点です。何かで恩返ししたかった。球団もファンサービスを掲げていますし、もし活躍することできたら、ユニホームを寄贈することも考えています。野球人である前に、1人の人間として成長したいです。そのために、いろいろな人の話を聞きたいです」。
意識レベルでは、すでにプロの自覚十分。今月で卒業試験も終了し、悩みは1つ。開幕戦となる3月26日のロッテ戦が卒業式と重なってしまうことだ。「残念ながら、卒業式に出られないように頑張るだけです」ときっぱり。開幕1軍へ、西谷が勝負のキャンプを迎える。【構成・柴田猛夫】
[2005/1/29/11:23 紙面から]
写真=内野守備のスペシャリストとして定位置獲得を目指す楽天西谷
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