五輪3連覇を狙う羽生結弦(ANA)は4回転の失敗があり8位、平昌五輪銀メダルの宇野昌磨(トヨタ自動車)は自己新の105・90点を出し3位、五輪初出場の鍵山優真(オリエンタルバイオ/星槎)が108・12と高得点を出し2位につけた。

10年バンクーバーオリンピック(五輪)代表で、11年世界選手権銀メダリストの小塚崇彦氏(32)が3選手の演技について語った。

【羽生結弦写真特集】SPまさかのミス8位、フリー巻き返しへ「神のみぞ知る」>>

試合中に穴にはまることは、まれです。

羽生選手は過去の経験からサルコーを同じ軌道で跳び続けた結果、溝にはまって失敗した経験があり、それを避けるために数センチ軌道をずらしたら穴があったと説明していました。

溝と穴は違います。溝はサルコーやループなどのエッジジャンプでできます。グッと踏み込み滑るために氷に道ができます。はまると足を誘導されるように持っていかれ、踏み切りが狂います。

穴はトー系のジャンプ、つま先をついて跳ぶ際にできます。穴の上を通ってしまうとガタッとなり、足元が揺らぐ。今回起こったのは後者かと思われます。強引にジャンプに持っていくと、軸が斜めになって氷にたたきつけられたり、捻挫の恐れもある。避けるために、羽生選手は回転をほどかざるを得ませんでした。

60メートル×30メートルのリンクに開いた10センチほどの穴。ピンポイントでそこにはまるのは不運以外の何物でもありません。ルールで12人が滑ったら、穴埋めして整氷を行いますし、意図して開けられたわけではありません。

過去の経験を生かしたら、そこに新しい出来事が起きた。1つの苦い記憶からいかに同じことをしないかと貫徹したら、そこに新しい出来事が起きたという事態でした。

サルコー以外の演技自体は、素晴らしかった昨年末の全日本選手権を思い出させました。ただ、やはり失敗に対して演技構成点も引きずられるので、上位とは大きな差になっています。ジャンプ1つでこれだけ順位が下がる。逆に他選手はフリーでミスできないと感じるでしょう。他選手の動向も含め、順位が大きく上がる可能性はあります。

2位の鍵山選手は団体戦に出場したからこそ、の演技でした。フリーを滑りましたが、先輩の宇野選手がSPの好演技で流れを作ってくれての出番。思い切り滑れて自信になったのでしょう。この日は不安を感じさせませんでした。

3位の宇野選手はジャンプで手をつきましたが、団体戦より点数を上げました。取りこぼしたステップシークエンスやスピンのレベルを3から最高難度4に上げ、他要素でも出来栄え点をコツコツ稼ぎ、相殺しました。(10年バンクーバー五輪代表、11年世界選手権銀メダリスト)