第8回では和食のマナーについてお話ししました。今回はお客さまを洋食のレストランにご案内したときのテーブルマナーについてお話しします。

 まずは皆さんに質問です。レストランでスープをいただくとき(1)スプーンを手前から奥に運びますか(2)奥から手前に運びますか。ライスを食べる時(1)フォークの背にのせますか(2)腹にのせますか。実はこの答えに正否はありません。ともに(1)が英国式で(2)がフランス式のマナーなのです。

 テーブルマナーは500年ほど前、イタリアの名家メディチ家のカトリーヌ嬢がフランス王家に嫁ぐときに、彼女のシェフがフォークの使い方などをまとめた「食事作法の五十則」が起源とされ、欧州各国に伝わりました。その広まりの中、英国とフランスは自国のプライドをかけてそれぞれ自己流にアレンジしていったため、同じ西欧でもテーブルマナーが違うのです。

 日本での公式の晩さん会では英国式が公式マナーになります。明治時代に宮内庁がバッキンガム宮殿で西欧のマナーを学び、歴史的にも英国と国交を重ねる機会が多かったためです。といってもフランス料理を食べるときに英国式マナーを使うと場違いな行動になる場合もあります。しっかりとその違いを認識して臨機応変に対応したいですね。

 共通の基本マナーもしっかりと覚えておきましょう。ナプキンはオーダー後にその輪(折り目)が手前にくるように二つ折りにして膝の上に置きます。ナプキンがあるのに自分のハンカチを使うのは「そのお店のナプキンは汚くて使えない」といっているようなものですから失礼な行為です。途中で席を立つときは軽くたたんで椅子の上に置き、退席時は適当にたたんでテーブルの上に置きます。きれいにたたむのは「料理がおいしくなかった」という意思表示になってしまいます。

 お魚料理を食べるときに魚をひっくり返すのはNGです。表の身を食べたらフォークで骨の左側を押さえ、ナイフを骨の下にくぐらせて身を外します。食事途中にフォークとナイフを八の字に置く場合も、食べ終わってそろえる場合も、ナイフの刃は内側(自分側)に向け、フォークは背を下に向けて置きます。

 日本人は洋食のテーブルマナーをつい固く考えがちですが、同席する人に不快な思いをさせないおもてなしの心、相手を敬う心づかいという意味では本質は和食のマナーと同じです。周囲を気遣いながら、楽しく食事をすることが大切です。(筑波大客員教授)

 ◆江上いずみ 慶大法学部卒。JALの客室乗務員として30年間で約1万9000時間乗務。13年にグローバルマナースプリングス設立。15年から筑波大客員教授。大学や官公庁、企業などで「グローバルマナーとおもてなしの心」などの講演を手がける。