<柔道男子日本代表監督 井上康生(36)>

 2020年東京五輪の開催が決まったときは、うれしいなと同時に、やっと来たなと思いました。1964年から何回も挑戦してようやくですから。

 柔道はその64年東京五輪から正式種目になりました。講道館柔道の創始者である嘉納治五郎師範がIOC(国際オリンピック委員会)委員として尽力してきた1つの成果として、悲願の採用でした。それがまた日本に帰ってきます。そこに何らかの形で携われるかもしれない。非常に特別な思いがあります。会場は再び日本武道館ということですから、歴史的なことです。

 64年は無差別級でヘーシンク選手(オランダ)が決勝で神永昭夫さんを破って優勝しました。あの日は、日本柔道が世界に敗れた日であると同時に、日本の柔道が世界の柔道になった日でもあるとも思います。今の発展にはヘーシンク選手の優勝というものがあり、いまがある。そういった両面がある。

 もちろん、今度は勝たせたいと思って監督をしています。高校総体(8月)を視察しましたが、6年後に向けていいタレントが多くいました。非常にうれしく思います。そこに今のように監督という立場でいるかは分かりませんが、今後の6年間の計画というのは強化方針として立てています。だから、健康には気を付けていたい。どんな立場でいるか分かりませんが、肉眼で見たいですね。

 時代は常に動いています。技術などで新しい部分も出てきています。従来のものとバランス良くやるのが大事です。新しく世界の流れをくんだ日本の柔道で、今度は武道館の畳の上で日本の選手が優勝できたら、最高ですね。その大きなチャンスがある。日本人の底力をみせられる大きなチャンスです。我々スポーツ選手だけでなく一般の方も何をやっていくか。身近に感じて、みんなで成功させたいですね。(取材・構成=阿部健吾)(2014年9月3日東京本社版掲載)

【注】年齢、記録などは本紙掲載時。