リオデジャネイロ・パラリンピック金メダルのオーストラリア、同銀メダルの米国、同銅メダルの日本が集結したジャパンパラ競技大会。最終日の28日は、予選ラウンド2位の日本が同3位のオーストラリアと3位決定戦を行い、勝者は1位の米国と決勝戦を戦う。

 エースのライリー・バットがケガのためメンバーから外れたオーストラリアに対し、終始日本のペースでゲームを進め69-55の大差で快勝。迎えた決勝戦、前半を25-25で折り返し1点差を争う攻防の末、51-52で惜敗した。日本は今大会2位で締めくくった。

 リオ・パラリンピック以降に就任したケビン・オアー監督は今大会を「将来を見据えた大事なテストマッチ」と位置付けていた。予選ラウンドからリオに出場していない女子選手の倉橋香衣(26=商船三井)らフレッシュな選手とともに、アテネ・パラから出場しているベテランの島川慎一(42=バークレイズ証券)を先発起用した。さらに対戦相手の選手交代と同時に、臨機応変に日本も選手交代を行った。日本はコートの中もベンチも活気にあふれていた。

 そんな中で日本チームをしっかり牽引したのが、主将の池透暢(37=日興アセットマネジメント)だ。池は、リオ・パラリンピックに初出場ながら池崎大輔(39=三菱商事)とともに銅メダル獲得に貢献した日本のエースである。米国は池、池崎の2人を徹底的にマークし、どちらかがボールを持てば4人のうち3人がかりで抑え込むような守備を見せた。

 第4ピリオド、51-52で日本は米国からボールを奪った。残り時間はわずかに1秒。オアー監督がタイムアウトを要求する。これにより日本は、落ち着いてコートの外からボールを入れることができる。

 コート中央付近から入れられたボールを池が受け取り、すぐに選手タイムアウトを要求した。車いすラグビーでは、ボールを保持する選手がタイムアウトを要求できるルールがある。1試合4回の権利があるが、この時点で日本には最後の1回が残されていたのだ。

 残り0・6秒。瞬きさえできないほどのわずかな時間だが、ボールを受けた瞬間から時計が動くため、コート外から投げられたボールを受けてそのままゴールラインを割ることができれば得点できる。事実、日本の今大会初戦で米国は第2ピリオド終了間際に、残り時間1秒を切ったタイミングでエースのチャック・アオキが得点を挙げた。日本の最後のチャンスだった。

 精度の高いパスを出す池が、コートの外に出る。ゴール前には池崎と、羽賀理之(32=SMK)が待機していた。マークの厳しい池崎ではなく羽賀に池はボールを投げた。ゴールラインを割るかと思われたが、無情にもブザーが鳴り響いた。

「わずかな残り時間での場面で、選手タイムアウトを取るタイミング、コンマ何秒での判断力が勝敗を分けた。米国はそういうミスがなかった」と池は悔しさをにじませた。

 池のロングパスは、日本の武器だ。相手選手を十分に引きつけておいて、ゴール前に走り込んだ仲間が受け取りやすいパスを出して、得点を積み重ねる。地元・高知県では、1人、ひたすら体育館の壁の節目を狙ってパスを出す練習を続けているという。

 「最後の場面、戦略としてのベンチワークが敗因。池、池崎は、オーストラリア戦直後でも、非常によくプレーしてくれたと思う」とオアー監督。「池、池崎などの高いレベルの中で新しい選手らが一緒にプレーする経験は、今後世界選手権などを見据えた上で非常に大事になったし、ここから日本はさらに向上するはずだ」と評価した。【宮崎恵理】