女子マラソン(視覚障害)で道下美里(39=三井住友海上)が銀メダルに輝いた。序盤は出遅れたが、30キロ手前で2位に浮上し、3時間6分52秒でゴール。2人の伴走者と多くの「チーム道下」に支えられ、今大会で初採用の種目で表彰台に立った。

 道下の驚異的なピッチは最後まで落ちなかった。ガイドランナーに助けられ、144センチの小さな体で駆け抜けた。スタート直後こそ遅れたが、20キロ手前で3位に上がり、30キロ手前で2位に立った。目標の金メダルこそ逃したが、銀メダル獲得に笑顔をみせた。

 最大の武器は笑顔だった。中2の時に右目を失明し、25歳の時には左目も0・01以下になった。山口県立盲学校に入学し「ダイエット」に走り始めた。マラソン転向で才能が開花。14年の防府マラソンでは非公認ながら2時間59分21秒の当時世界最高で走った。

 道下を支えたのは「チーム道下」だった。毎日の練習は曜日ごとに10人の伴走者と取り組む。メンタル、フィジカルトレーナー、給水サポーター、遠征の資金集めも頼った。「目が見えずに心は落ち込んだけれど無理して笑った。続けていたら人が集まってくれた」。

 リオでは、堀内規生と青山由佳がガイドランナーを務めた。「絆」と呼ぶ42センチの赤いロープを頼りに走った。1分間240のピッチは同じピッチ走法で知られる高橋尚子の200を上回る。さらに大会に備えて歩幅を伸ばす挑戦もした。「仲間と一緒に勝ちたい」と話した道下が、最高のチームメートとともに輝いた。