平昌五輪(ピョンチャンオリンピック)のフィギュアスケートは羽生結弦、宇野昌磨の男子ワンツーフィニッシュ、女子では初出場だった4位宮原知子、6位坂本花織が入賞と日本の大健闘で幕を下ろした。一方で22年北京五輪に向けて次世代も急成長中。ジュニア女子の紀平梨花(15=関大KFSC)は4回転サルコーを練習で成功させ、ロシアのトルソワ(13)はすでに4回転をプログラムに取り入れている。4年後に訪れるであろう新時代を占った。

 取材エリアで13歳の少女が、大勢の報道陣にマイクを向けられた。昨年12月、名古屋で行われたジュニアグランプリ(GP)ファイナル。年齢制限で平昌五輪の出場資格を持たないトルソワ(ロシア)が、フリーで4回転サルコーに挑んだ。惜しくも転倒したが、国際スケート連盟(ISU)公認大会で女子の4回転ジャンプ成功者は安藤美姫のみ。ざわめく周囲に「難度の高いジャンプを追っていきたい」と言い切った。

 出場メンバーはロシア選手5人と、五輪前年の7月1日時点で満15歳の五輪出場規定にわずか3週間届かなかった紀平。ISU公認で現役日本女子唯一のトリプルアクセル(3回転半)成功者である紀平は、そこに3回転トーループを付けて女子世界初の連続ジャンプを決めた。トルソワらの壁は高く6人中4位となったが、昨夏には公開練習で4回転サルコーに成功。「結構いい感じなので、後々の武器にしたい。もっと確率を上げて、入れられるなら入れたい」と実戦投入を視野に入れる。

 次世代がそろって目指すのが22年北京五輪だ。14年ソチ五輪後に4回転ジャンプの種類、本数が飛躍的に増えた男子に対し、女子は10年バンクーバー五輪以降、多くのトップ選手の得点源はルッツ-トーループの連続3回転。今大会も最終グループの6人中3人が全ジャンプで加点を導くなど、3回転までのジャンプを用い、演技全体の完成度で勝負する傾向にあった。その中で大技トリプルアクセルに挑み続けた浅田真央さんは昨年11月、ジャンプ高度化の可能性を口にした。

 「女子は、1年1年レベルも上がっている。私は(伊藤)みどりさんを見て『みどりさんみたいにトリプルアクセルを跳びたい』と思った。もっとたくさんの女子選手にもトリプルアクセルに挑戦してもらいたい。4回転の時代に女子もなってくると思います」

 4年後の北京五輪では、「4回転時代」到来の気配が漂う。平昌五輪を下から見上げた新星の鼓動が大きくなってきた。【松本航】

 ◆紀平梨花(きひら・りか)2002年(平14)7月21日、兵庫県生まれ。16年9月、ジュニアGP第5戦のスロベニア大会でトリプルアクセル成功。今季は全日本ジュニア選手権で初優勝し、3月の世界ジュニア選手権に出場予定。宮原知子、本田真凜、白岩優奈らと同じ関大が拠点で浜田美栄、田村岳斗両コーチに師事。153センチ、41キロ。

22年北京五輪での活躍が期待される主な女子選手
22年北京五輪での活躍が期待される主な女子選手