目指していた頂点には届かなくても、その笑顔が生き様だった。

 ソチ五輪銀メダリストの竹内智香(34=広島ガス)は準々決勝で敗れ、予選のタイムにより5位。今季は不調が続いていたが、持ち前の「超プラス思考」を発揮し、5度目の五輪も入賞を果たした。

  金メダルの目標は準々決勝で断たれた。それでも竹内は「4年間やってきた充実感、楽しさ、満足さがあります。オリンピックは何度来ても楽しい」と明るかった。2つあるコースのうち雪質の差異などから赤コースが圧倒的に有利だった。予選上位者から滑るコースを選択する決勝トーナメント。1回戦は赤コースでソチ五輪女王デュモビッツ(オーストリア)を破ったが、準々決勝は青コースで銀メダルを獲得したイエルク(ドイツ)に敗れた。ただ悲壮感などなかった。

 超ポジティブ-。いつもそうだった。16年3月。W杯で転倒し、左膝前十字靱帯(じんたい)を断裂。当時は米国留学も考えていたが、人生最大のけがで、初の手術をした。でも「全てが初めてのことって楽しいじゃないですか? 誰よりも早く回復してやろう、最短記録作りたいという気持ちでいました」。全治7カ月だったが、5カ月で雪上に戻った。公表も完治後。理由は「ネガティブな会話は誰とも一切したくなかったので」。昨年12月に持病のアレルギーを発症し、練習が積めなかった時も「必然。五輪本番ではなくてよかった」と受け止めた。

 その考え方の源流は07年から5年間拠点だったスイスにある。現地で「毎日、いい言葉やいい音楽を聴かされた水はいい結晶ができる。悪い言葉、悪い音楽を聴いた水はいい結晶が生まれない」と聞いた。人間の体も約60%が水分で出来ている。だから前向きになって、負の感情を全て捨てた。成績が出なくても、自らの体には「五輪の雪、魔物が味方になる」「自分は五輪に合う」と語り続けた。

 今季のW杯はパラレル大回転7試合で4度も予選落ち。でも5大会連続となる五輪では準々決勝まで進んだ。「金メダルがなくても、充実している競技人生だと思います」。湿っぽさなど無縁。これが第一線で戦い続けられる思考学だった。【上田悠太】