SP3位の宇野昌磨(20=トヨタ自動車)がフリー3位の202・73点を記録し、合計306・90点で銀メダルを獲得した。

 銀メダルを獲得した宇野は、リンクを離れると趣味のゲームや漫画で心を休めてきた。そのスイッチの切り替えに一役買っている弟でモデルの樹さん(16)が、日刊スポーツに手記を寄せた。同じ屋根の下で過ごしながら、大きなケンカもない仲良し兄弟。会場の2階席から応援した年の差4歳の樹さんが、兄の偉業を祝福した。

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 「おめでとう」と伝えたい。それ以上の言葉が見つからないです。

 フィールドホッケーをやっている僕は、ドリブルやノールックパスで魅了するプレーが大好きです。でも昌磨は正反対。「地道だな」といつも思います。2人で一緒にゲームをやっている時にもそれを感じます。

 昌磨がものすごく強いのは「大乱闘スマッシュブラザーズ」。キャラクターを選んで、ステージの上で戦うアクションゲームです。僕はゲームでも派手な技をやりたくなって、パワーが極端に秀でている「アイク」とか、スピードがすごい「ソニック」を使うんです。でも本気でやるときの昌磨は絶対に「マリオ」。マリオは全部の能力がごくごく普通で、あんまりみんな使わないんですよね。特徴がなくて、万能型。「何でマリオ使うん?」って聞いたら「何にでも対策できるから」って言うんです。すごく研究して、相手が考えていることのさらに上をいくんです。

 宇野家にルールは特に決められていません。自由に好きなことをやらせてもらってきました。その中で2人とも負けず嫌いなのは同じ。最近は卓球にハマッていて最初は勝ったけれど、昌磨はひそかに練習してやり返してきた。次は僕が3日連続でいろいろな人と練習して、リベンジに成功しました。その後「昌磨が必死に練習している」といううわさを聞いたので、昌磨らしいなと思いました。

 フィギュアの試合で調子が良くなかった時は、普段も少ない口数がさらに少なくなります。不機嫌というか、悲しさを感じます(笑い)。その試合、その試合で目標があるみたいで、1つ1つ、目の前の試合をいつも見ています。あまり大舞台とかに目標を置かず、次、どこを注意するかを考えてやっているんだと思います。ゲームも一緒。僕はレベル上げとかに飽きて、何か楽しそうなものに手を出したりするんですが、昌磨は地道にコツコツとレベルを上げていく。フィギュアとよく似ていると思います。

 そんな昌磨だから、五輪に出ることは実は想像できていました。昔からすごく頑張っていたので、違和感はないんです。あらためて、本当にすごいことだと思って応援していました。僕の自慢のお兄ちゃんです。(宇野樹)

 ◆宇野昌磨(うの・しょうま)1997年(平9)12月17日、名古屋市生まれ。5歳の時にスケートリンクで元世界女王、浅田真央さんに声をかけられ、フィギュアを始める。14年ジュニアGPファイナル、15年世界ジュニア選手権優勝。15-16年シーズンにシニアデビュー、15年GPファイナル3位で初の表彰台。16年4月に国際スケート連盟公認大会で史上初めて4回転フリップ成功。17年世界選手権銀メダル。今季はGPファイナル2位、全日本選手権2連覇。山田満知子、樋口美穂子両コーチに師事。159センチ、55キロ。

 ◆宇野樹(うの・いつき)2002年(平14)1月8日、名古屋市生まれ。名古屋国際中を経て同高陸上ホッケー部でFW。英語が得意で宇野の海外遠征で“通訳”を務めることも。趣味は漫画収集。165センチ。グランモデルズに所属し、テレビ番組などに出演。

 ◆宇野の父宏樹さんの話 本人は話しませんが見せない努力がたくさんあったと思います。メダリストとしてさらに成長する息子を陰ながら応援していきたいです。

 ◆母純子さんの話 日々の過酷な練習に耐え、地道な努力を傍らで見てきましたので「お疲れさま」と声をかけてあげたいと思います。