フィギュアスケート女子の宮原知子(19=関大)が「ミスター流」の心構えで回転不足を克服する。今日21日のショートプログラム(SP)に向け、20日は会場の江陵アイスアリーナ練習用リンクで公式練習。11日の団体SPで喫した2つの回転不足を防ぐキーワードを「グッ」と「バンッ」に設定した。プロ野球巨人の長嶋茂雄終身名誉監督をほうふつとさせる擬音語を合言葉に、坂本花織(17=シスメックス)とともにスタートダッシュを決める。

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 シャイで、真面目なイメージの強い宮原が、頬を緩ませながら言い切った。悩み続けるジャンプの回転不足について少し考え、対処法を明かしたときだった。

 「跳ぶときに『グッ』と上がることと、降りるときはエッジ(刃)で『バンッ』って降りてくるように意識をしています」

 打撃指導の際に「『ブンッ』じゃダメ。『ビュッ』と聞こえるまで振ってみい」など擬音語を駆使した長嶋終身名誉監督ばりのテーマ設定がなされた。11日の団体SPでは、冒頭のルッツ-トーループの連続3回転がいずれも回転不足判定。基礎点は正常着氷時の0・7倍となるため、2つのミスが6人中4位の68・95点に直結した。一時帰国を経て「回転不足を取られないようなジャンプを常に意識してきました」と課題克服をさらに意識した。

 身長は151センチと小柄で、「グッ」とスピードを生かして跳び上がることは第1関門。さらに昨年12月の全日本選手権後は、足の裏の中心で降りる“ミッドフッド着氷”を猛練習してきた。ルッツの着氷時、従来のつま先で降りると左右にぐらついてしまうが、「バンッ」と氷をつかむと次のトーループでまた「グッ」と上がれる。冒頭の連続3回転が大きな命運を握る。

 SP曲「SAYURI」をかけての通しはノーミスでこなし「調子は良くなってきている」と自信はある。「せっかくここまで来られて、本当にやるべきことはやってきた。『ここで出さなくて、いつ出すんだ』っていう感じ」。心の中で「今でしょ」と唱えたかは定かでないが、イメージは出来上がった。【松本航】