日本のエース宮原知子(19=関大)が自己ベストを1・30点更新する75・94点で4位につけ、表彰台を射程圏にとらえた。

 9日の団体戦ではジャンプで予期しない回転不足をとられたSP。映画「SAYURI」の曲を背景に、冒頭の3回転ルッツ-3回転を鮮やかに決めると波に乗った。ステップシークエンスでは芸妓(げいこ)になりきり、会場を魅了した。得点が表示されると、一気に笑顔が広がった。

 「なんとか大きなミスなく終われて、まだ緊張している感じなんですけど、フリーにつなげることができたのでよかったです」と笑顔。「団体戦で回転不足を取られてしまったので、次こそは、と思って頑張って少しの間でいたけど個人戦まで練習してきたのでそれをフリーでもしっかり出せるように頑張ります」「とにかくしっかり自分でも外から見ても回転不足じゃない、っていうジャンプを常に跳べるように、毎回跳べるように意識して練習してきました」と自信を取り戻した様子だった。

 昨年12月の全日本選手権で初の五輪切符を射止めてからも、壁があった。1月の4大陸選手権(台北)では71・74点でSPトップに立ちながらも、フリーはジャンプ2つの回転不足などで総合3位に沈んだ。14年から全日本選手権は4連覇中の絶対的エース。同シーズンからグランプリ(GP)シリーズ、GPファイナル、4大陸選手権、世界選手権で日本人トップを守り抜いていたが、坂本、三原のワンツーフィニッシュを表彰台の一番下から見つめた。

 台北アリーナの一室で行われた記者会見では「この試合に来てからあんまり…」と話したところで、涙がほおを伝った。募ったのは自分へのふがいなさ。一夜明けると、隠すことなく「今までもずっとですし、これからもそうですけれど、負けたくない気持ちが強い」とライバルに対する思いを込めた。そして「負けてしまった悔しさもあるけれど、自分の気持ちに負けたのが悔しい」と加えた。

 繊細で、真面目な性格は考え出すと止まらない。「もっと単純になりたいです」と少し笑いながら漏らしたこともある。そんな全日本女王が前日20日の最終調整後に「調子は良くなってきているので、このまま思い切っていきたいです」と言い切った。覚悟を持って、初めての個人戦に臨んだ。

 23日のフリーではメダルに挑む。「フリーまでは1日まだあるので、また気持ちを切り替えて、これまで頑張ってきたことを今度はフリーでしっかり見せれるように頑張りたいです」と誓った。