個人ノーマルヒルで2大会連続の銀メダルを獲得した渡部暁斗(29=北野建設)が5位に終わった。前半ジャンプ(ヒルサイズ=HS142メートル)で134メートルを飛びトップに立ったが、後半距離(10キロ)で走力のある強豪ドイツ勢らに追いつかれるとラストで突き放された。永井秀昭(岐阜日野自動車)は12位、山元豪(ダイチ)は16位、渡部善斗(北野建設)は20位だった。

      ◇       ◇

 ソチの悪夢がよみがえるようにアクシデントが再び襲った。渡部暁は9キロ過ぎの緩いカーブでスキー板が相手に絡み集団の後ろに置かれた。その数秒後、フレンツェルら4人が飛びだしたが、もう追う力は残っていない。目指した金メダルがどんどん遠くなった。前回五輪(オリンピック)でも4周目(1周2・5キロ)の下りで転倒したが、またしても勝負どころで大きな不利を受けた。「接触してバランスを崩すロスはあったが、それがなくても結果は変わらなかった」と言い訳にしなかった。

 前半ジャンプで134メートルを飛び、首位に立った。「悔いを残したくない。積極的にいく」と話した後半距離では、1秒差でスタートしたリーベル(ノルウェー)とともにハイペースで逃げたが、6キロ付近で走力のあるフレンツェルら4人に追いつかれた。6人集団になっても攻めの姿勢は変えず、前に出て揺さぶったが、ラストで突き放された。「足が残っていなかった。90%は先頭にいたかな。こういう展開で勝てないとチャンピオンにはなれない」と完敗を認めた。

 宿敵がまたしても前に立ちはだかった。今季のW杯は強豪ドイツ勢の不振もあり、4連勝を含め、自己最多の5勝を挙げる快進撃だった。ただ、14日のノーマルヒルでは、今季の個人総合8位と出遅れていた昨季の個人総合王者フレンツェルにソチ五輪と同じように一騎打ちで敗れた。本番にしっかり合わせる王者らしいレース。ライバルの復調により、ジャンプで差をつけられず、ジャンプで逃げて余裕を持って距離を走って逃げ切る「必勝パターン」が崩された。

 今季は昨季後半から取り組んでいるジャンプの改善がうまくはまり、安定して飛べているが、その一方で「クロスカントリーが良くない」と距離に課題を残していた。走力の高いドイツ勢の復活がその弱点を露呈させた格好だ。22日には団体戦がある。「メダルを取れるように良い仕事をしたい」。このままでは終われない。チームジャパンでメダルに再挑戦する。【松末守司】