“戦闘力”は極限まで高まっている。9日に開幕する平昌五輪(ピョンチャンオリンピック)のスノーボード男子ハーフパイプ代表の平野歩夢(19=木下グループ)が6日、韓国入り。スーパーサイヤ人のような髪形に“変身”したソチ五輪銀メダリストは、スノーボードでは日本勢初となる金メダルへの自信を示した。4年間の修業の成果を示し、最強の戦士となる。

      ◇       ◇

 強者たちとの決戦の地・韓国に降り立った平野は、毛先がまとまって、四方八方に逆立った新髪形で現れた。「いつも通りです」と淡々と話したが、その姿とみなぎる自信は覚醒したスーパーサイヤ人のよう。1月のXゲームでは「フロントダブルコーク1440」「キャブダブルコーク1440」と4回転を連続で決めるという“超必殺技”を世界で初めて成功させた。現地の実況から「どこの惑星から来たんだ」と称された男の“戦闘力”は果てしなく高まっているようだ。

 演技は究極の“形態”に突入しているからこそ、不安もある。会場は氷点下10度を超える寒さ。パイプは氷の壁となる。昨年3月には左膝靱帯(じんたい)を損傷しているだけに「硬いとけがのリスクも高くなる」と懸念し、「パイプをいい形で抜けられないとリップ(縁)で跳べない」と話した。それでも条件は同じとし、頂点へ向け「高い位置を目指す中で、自分らしい滑りができればいい」と引き締めた。五輪2度の金、1月のW杯でも100点満点を出したショーン・ホワイト(米国)ら猛者を自信を持って迎え撃つ。

 4年前のソチでは銀メダル。大会直前に右足首を捻挫し、「キャブダブルコーク1440」に挑戦できなかった。その技を決めたユーリ・ポドラドチコフ(スイス)が優勝。15歳2カ月でのメダルは冬季五輪の日本最年少記録だったが、悔いも残った。腹筋に重点を置き、本格的な筋力トレーニングに着手。強い衝撃にも耐えられるパワーを手にするなど進化した。

 4年に1度の金のメダルを巡る物語。「やれることはやってきた」と力を込めた。最強の存在と証明する時が来た。【上田悠太】

 ◆スーパーサイヤ人 鳥山明原作の漫画「ドラゴンボール」シリーズに登場する主人公、孫悟空ら戦闘民族サイヤ人が、戦闘力を上げるために変身した状態。同作は漫画単行本が世界累計2億5000万部以上、アニメが世界80カ国以上で放送と世界的人気を誇る。