日本のエースが、悲願の金メダルを獲得した。女子500メートルで小平奈緒(31=相沢病院)が36秒94のオリンピック(五輪)記録で優勝した。日本人で同種目を制したのは98年長野五輪の清水宏保以来2人目で女子初の快挙。

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 小平は、スケート技術を語りたがらない。銀を取った1000メートルの翌日の取材でもこんな場面があった。

 記者 レース映像は見ましたか?

 小平 見ました。やはり、いつもの滑りではなかったです。

 記者 どのあたりが?

 小平 言葉にするとそれに縛られてしまうので、それは…すみません。

 こんなシーンを、今季何度も見てきた。話したくない理由は2つある。1つは、実際とは違うニュアンスで伝わった報道を、自分が見た時を想定してのこと。大切にしている滑りの感覚の中に、他人の「言葉」が残るのが嫌だという。

 もう1つの理由は、幼い頃からスケート少女だった小平らしい。子供たちが、「小平の滑り」と誤解したまま練習に取り組んでしまうのが嫌なのだ。大学時代には教員免許も取得しており、将来的には指導者になるプランも持っている。「結果を出して、スケート人生を辞めたときに自分の言葉で伝えたい」。金メダリストの「言葉」が、また日本スケート界の歴史をつくっていく。【奥山将志】