【セーケシュフェヘールバール(ハンガリー)19日(日本時間同日)=益田一弘】リオデジャネイロ五輪の陸上男子100メートル代表、桐生祥秀(20=東洋大)が原点回帰する。前日のジュライ記念は追い風1・9メートルで10秒17の6位。今遠征は2大会3レースで9秒台の選手と合計12度対戦して4勝8敗。この経験を踏まえ、五輪まで最大の武器である中盤の加速力を重点的に磨いて、本番に向かう。

 桐生が自分の武器を再確認した。「得意なところを伸ばしていく。あと1速、ギアを上げたい」。4日間3レースで9秒台の選手と4勝8敗。欧州遠征を終えてたどり着いた結論は中盤の加速力=「桐生ジェット」を磨くことだった。

 前日のジュライ記念は50メートル付近までトップと互角。終盤で離されて「トップじゃないな。負けて悔しい」と話したが、優勝のシンビネ(南アフリカ)は9秒89、2位のパウエルは9秒92だった。桐生は自己記録9秒85を持つ3位のロジャースとは0秒05差。13年5月のロジャースとの初対戦時は0秒21差をつけられており「(昔に比べて)タイムも距離も縮まっている。だんだん近づいている」と3年間の成長を実感した。

 14年春の東洋大入学後は土江コーチの指導でスタートの改善などに着手。9秒台の選手に先着することも増えた。五輪前最後のレースを終えた土江コーチは「後半が課題だと分かっているが『後半どうしよう』よりもトップスピードを上げる。中盤のブラッシュアップ。そこに尽きる」。爆発的な加速という長所を生かす形で初の五輪に向かう。

 ハンガリーの空港に荷物が届かないアクシデントもあったが、街中で服を購入するなど「大丈夫でしたね」。パウエルら世界トップとのレースを経験して「あの中に入っていきたい」と決意を新たにした。