<リオ五輪:体操>◇10日◇男子個人総合決勝

 鉄棒を前に、正直「あの内村でも負けることがあるのか」という思いだった。鉄棒が得意な内村に対し、ベルニャエフは6種目の中では不得手。それでも、約0・9点差は大きかった。内村の鉄棒は15点台後半、団体予選で15・100だったベルニャエフは15点前後。逆転へギリギリだった。

 内村はその状況で完璧に演技をした。ベルニャエフの鉄棒は、ひねり技が多く減点されやすい構成。着地も乱れた。仮に1点差あれば、余裕を持てたはず。約0・9点という絶妙な差が、劇的な逆転を呼んだ。

 ベルニャエフは素晴らしかった。高得点を並べて、内村を苦しめた。しかし、内村はそれ以上だった。これまで経験のない追いかける展開で、最高の演技をした。僅差の勝負が、逆に内村の強さを際立たせた。歴史に残る大接戦だったからこそ、真のチャンピオンであることが証明された。内村はやっぱり強かった。(04年アテネ五輪団体総合金メダリスト)