いつものようにバーベルを上げ、笑った。だが、スナッチ81キロ、ジャーク105キロと記録は伸びない。トータル186キロで6位に入ったが、自己ベストより13キロも届かなかった。「4年間がんばってきたのにこれでは悔しい」。目標の入賞を果たしても、心からは笑えなかった。

 平静で競技に臨めなかった。当初はスナッチを83キロでスタートする予定だったが、代表の三宅監督が確実性を求め81キロで申告。結果、申告重量の振り分けで上位のA組に入れず。B組では実力が抜けており、スナッチもジャークも他選手が終えてからの連続試技。競り合う相手がいなかった。「正直テンションは下がりました」。9年間二人三脚で歩んできた横山信仁コーチ(67)が指導者数制限でそばにいなかった。「安心できない部分はあった。先生の存在は大きいとあらためて思った」。神戸に残った恩師にメールで報告すると「一からやり直しましょう」と返ってきた。「ゲキオコ(激怒り)でしたね」。

 ロンドンの12位から6位に。28歳で迎える3度目の東京五輪では「もう半分(の3位)にできるよう頑張る」。両手のひらには、徳川家康、イチローらと同じ天下取りの手相と言われる「ますかけ線」がくっきりある。強運は東京で発揮する。【高場泉穂】

 ◆八木かなえ(やぎ・かなえ)1992年(平4)7月16日、神戸市生まれ。5歳で体操を始め、須磨友が丘高1年から競技を始める。高1の08年高校総体で48キロ級優勝。2、3年は53キロ級優勝。12年ロンドン五輪53キロ級で12位。13年ユニバーシアード大会優勝。152センチ、53キロ。血液型B。