閉会式をもって五輪が終わった。自分の担当競技の世界選手権と違った一番の利点は、ちょっと移動すれば他競技の取材ができることだ。1つの町で複数の「世界一決定戦」が行われる。知見を深める意味で非常に有意義で、普段担当しない選手の言葉に目からうろこが落ちることも度々だった。

 それは選手も同じだろう。レスリング会場で会った柔道の外国人選手は、4連覇を達成した伊調馨の決勝を見つめ、「本当に見に来てよかった。すごく勉強になった」と戦う姿勢、技術に目を見張っていた。選手村の交流もいいが、やはり会場に来て自身の競技以外から刺激を受けることは、五輪ならではの体験だ。

 残念ながら日本選手団は、試合が終わると帰国するのが常。選手村での経験だけを五輪の思い出に持ち帰るのが通例となっている。それではもったいない。20年東京五輪の最大の利点は、「帰国」しなくていいことだ。できるだけ多くの会場にアスリートが足を運び視野を広めることが、20年以降の日本スポーツ界にとっても財産になる。

 記者としても、次の4年間は、より多様な選手の言葉を聞きに行きたい。そして、もっと多彩に、深く、東京での選手の活躍を伝えられたらと思う。【阿部健吾】(おわり)