8月5日のリオデジャネイロ五輪開幕を前に、世界反ドーピング機関(WADA)の調査チームが国ぐるみの不正を認定したロシアの処遇を巡り、国際スポーツ界が揺れている。

 19日に緊急理事会を開いた国際オリンピック委員会(IOC)は結論を21日以降に先送りしたが、リオ五輪で全競技からロシア選手団を締め出す姿勢を示した。一方、こうした方向性には賛否両論が出ている。

 18日のWADA調査チームの報告書公表を前に、米国とカナダの反ドーピング機関が作成したIOC宛ての文書の草案が報じられた。「IOCは直ちにロシアを資格停止にするべきだ」などと強硬な意見が書かれ、波紋を呼んだ。これに対し、国際体操連盟は「違反のないロシア選手は五輪出場が認められるべきだ」と連帯責任に反対する声明を発表。28競技の団体で構成する夏季五輪国際競技連盟連合(ASOIF)は19日、「選手個人の正義を尊重する必要がある」と全面禁止には慎重な立場を示した。

 焦点となるロシアの締め出しについて、IOC幹部は「クリーンな選手個人の持つ権利を不当に侵害しないか見極める必要がある」と指摘した。国際陸連からチームとしてリオ五輪出場を禁じられたロシア陸連と同国の陸上選手68人が、処分を不服としてスポーツ仲裁裁判所(CAS)に提訴した問題で、裁定が21日に予定されている。IOCはこの結果を待ち、法的側面を精査して判断する。

 五輪のメダル争いで米国や中国と上位を争ってきたスポーツ大国を排除すれば、1980年代にボイコット騒動に揺れた東西冷戦時代以来の汚点となる。ロシアの反発も予想され、不正に断固とした態度を取るIOCは難しい決断を迫られている。