リオデジャネイロ五輪バドミントン女子ダブルスで高橋礼華(26)松友美佐紀(24=ともに日本ユニシス)の「タカマツ」ペアが金メダルを獲得した。19日未明、高橋の地元奈良・橿原市のかしはら万葉ホールで行われたパブリックビューイング(PV)では約800人が熱狂する中、高橋の父昭博さん(53)は娘の晴れ姿に号泣した。

 父は涙を止められなかった。高橋の最後のスマッシュが決まると、超満員の会場が歓喜に沸いた。泣きながらコートに倒れる娘の姿に、昭博さんは橿原市バドミントン協会横田会長と抱き合い、男泣きした。

 「(タカマツの)娘2人に感無量。礼華が12歳の時のことを思い出してしまった」

 脳裏に14年前の光景が浮かんだ。礼華の白橿南小卒業式の3日後。聖ウルスラ学院に入学するため、宮城に向かう娘に、社会人野球出身の父は厳しい言葉を贈った。真っすぐ自分を見つめる娘を「覚悟して行くねんから(中高)6年間しっかりやれ。お前が泣いて帰ってくるところはない」と突き放した。まだ12歳の娘に心を鬼にしつつも、本心は寂しさ、悲しさ、不安でいっぱいだった。

 娘は中学に入ってすぐ、ヘルニアになった。新生活の希望が絶望に変わった。早々の挫折に母智子さん(49)には「やめたい…」とこぼした。それでも、父には絶対弱音を吐かなかったという。その覚悟を知っていたからこそ、自然と涙がほおを伝った。

 「自分の娘というのが信じられない。(第3ゲームで)16-19になった時はダメかと思った。でもあの形から逆転するのがタカマツ。2人の気持ちの強さが出た。ぜひ東京五輪までやって欲しい」

 奈良から宮城、そしてリオデジャネイロへ。どんなに距離は離れていても、思いは通じていた。輝くメダルの陰には父娘の絆があった。【小杉舞】