【アラカジュ(ブラジル)27日=木下淳】開幕まで10日を切ったチームが、いきなりエースを“強奪”された。リオデジャネイロ五輪日本代表FW久保裕也(22)が所属するスイス1部ヤングボーイズは27日、久保の五輪派遣を拒否する声明を公式サイトで発表。「出場を見送ってもらうことになった。首脳陣はクボ本人と密接に連絡を取り、この決定を伝えた」と“決定事項”として明示された。

 26日に欧州チャンピオンズリーグ(CL)予選3回戦の第1戦があり、アウェーでシャフタル・ドネツク(ウクライナ)に0-2で敗戦。久保は後半3分から出場し無得点だった。この試合でスウェーデン人FWのアレクサンデル・ゲルントが左膝を負傷。既にスイスリーグも開幕しており、8月2日か3日には欧州CLの第2戦が待つ。連戦の中、前線の駒不足に陥ったクラブが急きょ五輪派遣の約束を、ほごにした形だ。

 スポーツディレクターのビッケル氏は「日本の五輪出場に貢献したクボには本当に申し訳ないが、チームの利益を守るという観点から我々は決断しなければならなかった」と説明。今回の五輪は23歳以下も代表招集に拘束力がなく、日本協会は「現時点で、こちらからコメントできることはありません」としたが、今後の情勢は流動的になった。

 久保は本来、21日にチーム本隊の経由地ロンドンで合流予定だった。アジア最終予選で唯一、全6戦に出場したFWが離脱することになれば、バックアップメンバーのFW鈴木武蔵(22=新潟)を昇格させるなどの対応を余儀なくされる。