萩野公介(21=東洋大)が日本勢第1号となったことを受け、8歳から高校3年まで指導した恩師、栃木・御幸ケ原スイミングスクールの前田覚(44=さとる)コーチも至福の喜びに浸った。

 この日は栃木・小山市で小学生の競泳大会を開催中だったが、レースを中断してもらい、スマホで萩野のレースを見守ったという。

 「公介は自分のペースを貫いた。(3番目の)平泳ぎで抜かれなかったので、大丈夫だと思った。ホッとしたし、最高にうれしい。(同じスイミングスクールで指導した女子400メートル個人メドレーの)清水咲子も決勝に進みましたし」。萩野からは海外遠征に出発する前に連絡があり、「金メダルを取ってこいよ」とハッパをかけると「取ってきます」と返ってきたという。「昨年の世界選手権では右肘のケガもあって、周りに迷惑をかけた。それを金メダルで恩返ししてくれた」としみじみと語った。

 小学生時代から「怪物」と呼ばれた萩野に対し、その才能をつぶさないよう同じ目線に立ち、コミュニケーションを密に取って指導。高校3年生で迎えたロンドン五輪では銅メダルに輝いた。「天才。だけど努力できる天才。北島康介選手が去って寂しくなったところにあって、同じコウスケが次の世代を引っ張ってもらいたい」と期待も込めた。

 今後は100メートル自由形、200メートル個人メドレー、800メートルの出場を予定している。前田コーチは「いい流れで明日からのフリー(自由形)に臨める。何とかメダルを取ってもらって、200メートル個人メドレーでは憧れのロクテ、フェルプスらトップスイマーに勝って、真のキング・オブ・スイマーになってほしい。そして800メートルリレーでは、小さい頃から面倒を見てもらった松田(丈志)選手のためにも、頑張ってメダルを取ってもらいたい」と、遠くブラジルへエールを送っていた。