卓球女子で世界ランキング8位の福原愛(27=ANA)が、準々決勝で同4位で第2シードのフェン・ティアンウェイ(シンガポール)に4-0で勝利した。

 3試合連続のストレート勝ちの圧勝で、初の4強入り。日本卓球界初の個人メダル獲得に王手をかけた。準決勝は10日(日本時間22時)に行われ、前回女王の李暁霞(中国)に挑戦する。

 福原は試合開始から自信を持って積極的に攻めた。過去3勝12敗と相性は悪かったが、バックハンドに活路を見いだした。第1ゲームから、ロンドン銅メダルの相手を左右に揺さぶり、スピードで相手を揺さぶった。一時は3-6でリードされたが、ジュースの末に勝ち取ると波に乗った。第4ゲームも開始から5連続てするなど、勢いは止まらない。「自分でも4-0で勝てるとは思わなかったので驚いています。私が3試合連続ストレート勝ちしているのもそうですし、五輪は何が起きるか分からない。ボールが床に着くまで集中していました」。心身の充実は著しい。

 ロンドン以降はケガや体調不良などもあって、結果が出ない試合が多かった。今年4月には、せきぜんそくを発症し、練習不足の影響で体のキレが本来とはほど遠かった。リオへ向けた調整でも悩んでいた6月、都内でのジャパンオープン荻村杯直後に、幼少期から日本協会の一員として卓球界を盛り上げてくれた恩師、前原正浩副会長からメールが届いた。「リオに向けて覚悟を持って練習しなさい。自分のプレースタイルを見直しなさい」の一文。直前の東京合宿では、福原が志願して個人練習を懇願。「泣き虫愛ちゃん」「ちび愛」と呼ばれた時代に行っていた猛練習を復活させ、よみがえった。

 代表合宿中は「時計の針が1周するほど、限界を超えるまで練習しました」という通り、1日平均12時間以上を練習に打ち込んだ。いつ倒れてもいいように、常にトレーナーに自分に異変が起きてもいいように寄り添ってもらった。練習が終わってから、しばらく立ち上がれなかったこともあった。リオへ出発直前には、鹿児島・奄美市で自主合宿。気温30度、湿度80%を超える蒸し暑さの中でトレーニングを積んだ。「こんなにやったんだからという自信が、試合の成果につながっていると思う。練習したことが試合で出せています」と自信の表情も揺らいでいない。

 初進出となる準決勝以降は、4大会連続出場でも未知の領域に突入する。過去1勝9敗の李との決戦を前に「ものすごい強い相手で、前回のオリンピックチャンピオン。何が起こるか分からないのでベストを尽くすことだけを心がけます」と決勝進出も狙う。悲願だった日本人初の個人メダルへ、あと1勝だ。【鎌田直秀】