日本は中国に1-3で敗れて銀メダルに終わった。卓球王国撃破はならなかったが、世界ランク6位でエースの水谷隼(27=ビーコン・ラボ)が、世界ランク上位を独占する「中国ビック4」の一角から初めて勝利した。第2試合のシングルスで世界ランク3位の許昕(26)に3-2。過去12戦12敗だった相手に大舞台で価値ある1勝を挙げた。20年東京五輪での金メダル獲得に向けても、大きな1歩となった。

 水谷は豪快なガッツポーズでほえた。許に勝利も、試合に勝ったわけではない。それでも両手を広げて、大観衆の声援をあおった。「決勝戦でビッグ4と呼ばれている彼らに勝てたことは、メダル以上に価値があると思います」。馬龍、樊振東、許昕、張継科の4人に対し、国際大会で過去0勝33敗。「今日僕が勝って、東京での金があるなと明確に見えてきた気がします」。団体は全勝。芽生えてきた自信が、確信へと変わりつつあった。

 第2試合のシングルス。最終ゲーム7-10からの大逆転劇だった。「逆転負けするいつものパターン。唯一、違ったのは諦めなかったこと」。最後は5連続得点で決めた。今年3月のカタールオープンでは許に最終ゲーム10-4から8連続失点で逆転負け。09年アジア選手権団体でも2-1のリードしながら、許にマッチポイントを奪ってから逆転負け。三度目の正直で最後の1点をつかみとった。

 幼少期から「打倒中国」を植え付けられた。祖父鈴木暁二さんの言葉は今でも胸に残っている。「絶対に最後の1球まで諦めるな。そうすれば日本一になれる。世界一の中国も倒せる」。中国に対抗心を燃やすあまり、パソコンのマージャンゲームでも「中」は真っ先にきる。14年6月に祖父は他界。ラケットケースの中に写真を忍ばせる。天へのガッツポーズは祖父にも届いたはずだ。

 4年前のロンドンで不眠症にもなった精神的弱さは、もうどこにもない。「メダルそのものには興味がない。卓球界が注目されることに意味がある」。20年東京五輪こそ水谷の価値が高まる。【鎌田直秀】