18・44メートル先からの証言-。日刊スポーツでは東京オリンピック特別企画として、侍ジャパンのエース格であるオリックス山本由伸投手(22)の投球に迫ります。4日の準決勝で6回途中2失点(自責1)で決勝進出に貢献した若き右腕。今回は、オリックス入団時からの“相棒”瓜野純嗣ブルペン捕手(37)に「左手の記憶」を証言してもらいました。【取材・構成=真柴健】

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山本由伸のプロ生活5年間、ブルペンで“バッテリー”を組むのは、いつも瓜野ブルペン捕手だ。

「良い意味で、由伸は何も変わらないよね。いつも『ウリさん、お願いしまーす!』って。明るく笑ってる。投げる前も笑顔で、投げているときもね。自然体だから『スイッチ』は、ないんじゃないかな」

先発登板2日前は約30球、登板前日は12、13球ほどのブルペン投球で調整する。球数からわかるように、全球種は投じない。「体が横振りになるみたいで、スライダーはほとんど投げない。縦カーブの調子が良いとき、腕がキッチリ振れている印象」。4日の準決勝・韓国戦(横浜)でも落差のあるカーブを披露し、ここぞの場面でスライダーを投じていた。

ブルペンに設置されているラプソードも駆使し、データ分析する。自身の体や投球フォームを理解する、細かな配慮がマウンドで生きる。

受ける際、恐怖さえ感じる迫力ある投球だが、グラウンドを離れれば22歳の好青年だという。

あるとき「うちの4歳の娘に頼まれて…。由伸投手に手紙と絵を描いたから渡してほしい」と“愛の配達”を頼まれた。

「渡されても、困るだろうなぁ…と思って、見せるだけ見せたら、家に持って帰ろうと思ったらさ。めちゃくちゃ笑顔で『これ、もらってもいいですか? カバンに入れておきます!』って言ってくれて…」

強打者をなぎ倒す勝負師は、心温まる優しさも兼ね備えている。