東京オリンピック(五輪)のフェンシング男子エペ団体で、同競技では日本初となる金メダルを獲得した見延和靖(34)が10日、所属するネクサスの本社(群馬県高崎市)で報奨金1億円を贈られた。報告会に出席し、星野敏代表(60)から目録を手渡された。

衝撃の金額のサプライズ贈呈に、見延は「緊張とは違う体の震えを感じている」と仰天。同時に「活躍すると、こんな夢があると後輩に伝えたい」と、今後のフェンシング界への好影響も実感した。24年のパリ五輪に向けても、7月末の一夜明け会見と同様「団体2連覇と個人金メダルの2連覇を目指したい」と意欲を口にした。

「太っ腹」の星野社長もフェンサーだった。法大時代の83年に全日本選手権の男子フルーレで優勝。見延の大学の先輩でもあり、その後は日本協会の会長も務めた。かねて「フェンシングを頑張る人たちに夢を与えたい」と語っていたといい、所属選手としてサポートしてきた見延の、日本にとっても悲願の金メダル獲得に、このご時世では破格の報奨金を用意していた。

ネクサスはパチンコホール「D’STATION」や飲食店などアミューズメント事業を展開。経験者の星野社長が09年4月に「NEXUSフェンシングチーム」を創設し、後進の地位向上と育成に力を入れてきた。12年ロンドン五輪の男子フルーレ団体で銀メダルを獲得した千田健太と淡路卓も当時所属していた。

今回の東京五輪には男子エペ主将の見延を含む4人を送り込んでおり、この日の報告会には男子フルーレの個人と団体で4位に入賞した敷根崇裕、同団体4位の永野雄大、女子サーブル団体5位の青木千佳、サブリーダー兼サーブルコーチの橋本寛氏も出席した。【木下淳】

◆見延和靖(みのべ・かずやす)1987年(昭62)7月15日、福井県越前市生まれ。中学までバレーボール部で高校からフェンシングを始める。武生商から法大をへてネクサス入り。197センチの長いリーチと垂直跳び80センチの身体能力を武器にW杯とグランプリの個人で優勝5回、団体優勝1回。16年リオデジャネイロ五輪は個人6位。日本協会の選手会会長も務める。177センチ、75キロ。血液型B。

◆五輪競技の報奨金

▽JOC 日本オリンピック委員会(JOC)は92年冬季アルベールビル、夏季バルセロナ五輪から報奨金制度を導入し、現在は金は500万円、銀は200万円、銅は100万円が贈られる。

▽各競技団体 それぞれで異なる。高額な例では、日本ゴルフ協会は金2000万円、銀1000万円、銅600万円、日本陸連は金2000万円、銀1000万円、銅800万円を設定していた。ゴルフは稲見萌寧が銀メダル、陸上は20キロ競歩で池田尚希が銀メダル、山西利和が銅メダルを獲得した。全柔連や日本水連はメダルを獲得しても報奨金はなし。

▽所属先、スポンサー それぞれで異なるが、1億円は異例。卓球男子の公式ウエアを提供する「VICTAS」は、2017年の公式ウエア発表時に児玉義則社長が「男子団体が金メダルなら1億円の報奨金を出します」と明かしていた。

▽五輪外 日本実業団陸上連合は2015年7月、男女マラソンで日本新記録達成時の報奨金1億円を設定(20年3月に終了)。設楽悠太が1回、大迫傑が2回、ボーナスを手にした。