東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長(83)の発言が女性蔑視と批判されている問題で、森氏を取材するなど政界の表裏を知るジャーナリスト田原総一朗氏(86)が7日、取材に応じ、「辞めた方がみんな納得する」と話した。会長として不適任との声が多数の世論と異なり、政治家や組織委からは続投を望む声が相次ぐ。日本にはびこる正論を言えない空気も良くないと指摘した。【取材・構成=近藤由美子】

-森氏の発言をどうみている

「あんなことを言って、批判されるのは頭では分かっていたはず」

-背景には何がある

「気が弱い人だから、逆に強気に振る舞おうとするのでは。総理大臣になった日の朝、『所信表明演説の原稿があるから、読んでくれないか』と電話があった。断ると『悪いけど官邸に来てくれないか。不安で不安でしょうがないんだ』と。今でも変わっていない」

-世代的なものもある

「僕ら世代が教育を受けた戦前の小学校は男女別学で、男女平等教育は戦後になってから。男女平等をやらなければとの気持ちはあっても、教育から、すっきりといかないところがあるのでは。女性の国会議員が10%もいないのも、先進国では日本ぐらい。(一定の比率を割り当てる)クオータ制などで3割は女性にするといったことなど、自民党議員は皆反対だよね。なかなかクオータ制はできませんね。企業でも女性管理職が少ないなど実態は同じだ。日本はどこでもそういった背景もある」

-本来、女性差別発言をするような人なのか

「まったくないです。奥様を交え、3人で食事したこともありますが、家では完全なカカア天下ですよ」

-世論は森氏を会長として不適任とする声が多数だが、政治家や大会組織委員会から辞任を望む声は上がっていない。なぜか

「自民党の国会議員はやっぱりえらくなりたいと思っている。執行部のご機嫌を取らないと当選できない。日本の企業の社員もそう。空気を読まないと生きていけない。正論を言った人はまず出世しないでしょう。組織はみんなそう。国全体が正論を言えない空気になっている。今の日本の良くないところだ」

-森氏の進退についてはどうみている

「IOC(国際オリンピック委員会)が続けてくれと言うから、続けようと思っているのでは。でも、辞めるのが皆が納得します。本人もすっきりするでしょう。問題はIOCがなんで続けようというのかね。ここが続けろというから、森さんも強気になって、政府も森さんに辞めろとは言えない。IOCは森さんが辞めたら五輪ができないと思っているかもしれないね」

-森氏発言後、菅首相と会っている。首相は発言について何か言っていた

「(発言は)悪いと思っているのでは。なんであんなことをいうんだろうと思っているのでは。言わなくても菅さんも思っているし、誰だって悪いと思っているでしょう」

-森氏発言問題は社会を変えるきっかけになる

「そうなるのでは。森さんの問題でダメだと思うのでは。日本の会社はダメ。権力者である社長は自分の会社をいかに育てるか大事だが、社長に権力者の意識がない。日本の企業はIT革命以降、米国の3周遅れ。守りの経営ではダメだ」