16年リオデジャネイロ・オリンピック(五輪)銅メダルの高藤直寿(28=パーク24)は決勝で楊勇緯(台湾)を延長の末、反則勝ちし、今大会で日本勢初の金メダルを獲得した。

試合後は男泣きし、「みんなに支えてもらってこの結果があると思う。監督やコーチに迷惑をかけてばかりだった」と喜んだ。相手が3つの反則を犯しての勝利に、「豪快に勝つことができなかったが、これが僕のに柔道」と話した。

金メダル候補でありながら平常心を保てなかったリオ五輪以降は、勝ちに徹する「安定感のある」柔道スタイルで17、18年世界選手権を連覇。しかし、東海大の後輩、永山竜樹(了徳寺大職)が台頭し、19年世界選手権の直接対決で敗れ、一時は強化陣から「同等」との実力と評価された。その後は、意地の巻き返しで同11月のグランドスラム(GS)大阪大会決勝で永山に勝利。20年2月の全日本柔道連盟の強化委員会では3票の反対票が投じられるも東京五輪代表に内定した。この反対票が反骨心を生み、さらに闘志に火を付けた。

コロナ禍以降は「総合力」をテーマに心技体を磨いた。実戦から10カ月以上離れた昨年12月には、試合がないのに試合を想定してあえて60キロに減量した。男子代表軽量級担当の古根川実コーチは「好成績を残した時とほぼ同じ体組成の数値だった」と高いプロ意識に脱帽した。

円熟期に入った28歳の柔道家は「リオよりも強い自分がいる」と自信に満ちて臨んだ2度の大舞台で、ついに大輪の花を咲かせた。

◆高藤直寿(たかとう・なおひさ)1993年(平5)5月30日、埼玉県生まれ。栃木県で育ち、神奈川・東海大相模中、高-東海大-パーク24。11年世界ジュニア選手権制覇。13、17、18年世界選手権優勝。16年リオ五輪銅メダル。世界ランク4位。左組み。得意技は小内刈り。趣味はゲーム。好きな食べ物はラーメン。家族は妻、長男、長女。160センチ。