「アンチ・セックスベッド(反セックスベッド)」? フェイクニュース? 

東京オリンピック(五輪)が開幕する中、選手村のベッド問題がSNSで話題となっている。まず、段ボールで作られており、耐久性を下げてセックスをさせないためだとのうわさが広がった。その後、アイルランドの体操選手、リース・マクレナハン(21)が何度もベッドの上でジャンプする動画を挙げ、「フェイクニュース!」と実証実験を行う姿も。

五輪仕様の特製ベッドを製作したのは、浅田真央さん、錦織圭選手など、アスリートを長くサポートしてきた寝具メーカー「エアウィーヴ」。高岡本州会長(61)に思わぬ関心について直撃インタビューした。【取材・構成=阿部健吾】

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-ベッドが話題となってます。

「まず、びっくりしたのはSNSの威力ですね。段ボールで作ってあるのは、そういう行為をさせないためというのは、ちょっと勘違いなんですが、それでも一瞬のうちに広がるのはすごいなと。一方で、その後にマクレナハン選手がジャンプする動画をツイートしてくれて。彼のツイッターに返事しておいたんですよ。『ありがとう。秘密は上のベッドマットレスにあるから、そこもよく見ておいてね』と」

-選手村のベッドは19年に発表されています。段ボール製にした理由を教えてください。

「関心を受けて、弊社の公式ツイッターでも説明させてもらいました。まず、独自の技術を詰め込んでいるのはマットレスです。肩、腰、脚に分割され、表裏で硬さの異なるパーツを選手自身が組み替えて使ってもらう仕様になってます。組み替えのため、最小限の厚さにする必要がありました。個々の筋肉量、体形などに応じて反発力を最適にするためです。厚みを少なくした分、寝た時にフレームに負荷がかかります。そこで段ボールを選びました」

-段ボールは脆弱(ぜいじゃく)なイメージがあります。

「それは誤解でして、木材やスチールなども試し、最も耐衝撃性があったのが段ボールでした。200キロまで耐えられます。マクレナハン選手のようにジャンプする実験は、もっと重い人でもやってます。ただ、あの跳んで「フェイク!」とやってくれるのはおもしろいですね。段ボールは睡眠の質には影響しません。『段ボールかよ』という言い方されるのはしょうがないです。理解が深まる途中のプロセスだと思ってます」

-選手の意見を選手が検証するのは五輪ならでは

「多様性のある発信は五輪らしいなと。いま厳しい状況で開催されるので、もちろん反対意見もたくさんあります。ちょっとみんなが喜べないようなこともある。ただ、ああいう掛け合いはいいなと。会議でコミュニケーションを円滑にするために行われる『アイスブレイク』という時間があります。緊張を緩和させる目的で、議論前や休憩明けなどに設けられます。今回の話題が、1つのアイスブレイクになればいいなと。緊張を解かしてくれるものになってほしいと思っています」。