エースの夏ははかなく終わった。日本はメキシコに1-3で完敗した。53年ぶりのメダル獲得を期待されたが、MF久保建英(20=レアル・マドリード)はフル出場も無得点。試合後は人目もはばからず号泣した。悔しさにまみれつつ、来年に迫るワールドカップ(W杯)カタール大会ではチームの絶対的存在になることを宣言。自国オリンピック(五輪)で得た糧を、今後のキャリアに生かす。

最後まで立ち上がれなかった。無情の試合終了の笛。膝から崩れ落ちた久保のほおを、涙が絶え間なく伝った。「わからない。あんまり泣くことないので」。気丈に強がった。「自分が決めていれば、自分がアシストしていたら、自分がPKをとっていたらと、いろんなことを考えた」。取り返すことのできない90分をこれだけ悔やんだことはなかった。

2点を先行される苦しい展開。左サイドからDFの虚を突くパスでMF相馬のチャンスを演出するなど随所に持ち味は見せた。しかし連戦の疲労は隠しきれず、試合が進むにつれ動きも重くなった。1点を返した三笘について「フレッシュな薫君ならなんとかしてくれるんじゃないかと思った」と話す一方で「最後は人任せになってしまった。そこも薫君に申し訳ない」。徐々に足が動かなくなっていく自分が許せなかった。

メキシコとは1次リーグで対戦し、2-1で勝利している。自身も先制点を奪う活躍だった。それだけに「今日の相手は格上じゃない。3人くらいマークがついてもはがして決めきるくらいじゃないと。負けた自分がなにを言っても口だけなので。ただの負け犬の遠ぼえ」と自身を責めた。

真夏の日本で、中2日で6試合。うち2試合は延長戦で120分間に延びた。久保は「日程は正直、ありえないと思う」と、選手の気持ちを代弁するように率直な心境を口にした。さらに試合前夜、キックオフ時間が変更。国際大会のメダルマッチという重要な試合が直前に時間変更するのは異例だ。久保は「勝って文句を言いたかったけど、負けたので。向こうは動揺せずに対応してきた」と、もどかしさも感じつつ相手をたたえた。

今大会は失意に終わった。9月には22年W杯カタール大会のアジア最終予選がやってくる。A代表組の1人として、すぐに新しい戦いが始まる。「ポジションをさっさとつかんで試合に出て、W杯が始まるころには代表で圧倒的な存在になっていないと遅い。まずは最終予選に1試合でも多く出て、活躍して、W杯で頑張りたい」。悔しさを深く心に刻み込み、ふたたび挑戦の道を歩み出す。【岡崎悠利】