4月から【ボートレーサー養成所】での実技教官として、未来のボートレーサーを育成されている原田富士男元選手(51)。今回は、一足先にその原田選手から育ててもらったという、国弘翔平選手をご紹介します。

高校時の体育祭で、水摩敦(左)と国弘翔平(右)
高校時の体育祭で、水摩敦(左)と国弘翔平(右)

ボートのことは、地域的にも小さい頃から知っていたという国弘選手が、初めてボートレーサーを目指したのは99期の試験から。実はその99期で合格した水摩敦選手(33=福岡)とは、小学校の頃からずっと一緒にサッカーをしていた仲で、高校3年間は同じクラスだったそうで、「先に受かった水摩さんがすごい活躍されてるから僕も諦めきれなくて、規定が106期の募集から30歳未満になったんで、もう一回頑張ってみようと受け始めました」と再チャレンジを始めた理由を教えて下さいました。

110期で合格となるまでの事を尋ねると「大学行って、その後社会人になって長崎で勤務してました。大学は経済学部ですし、就職先はガス会社でガス漏れとかを点検する仕事だったんで、どっちもボートには関係ないんですけどね(笑)」と自分で突っ込みを入れながら笑って話してくれる国弘選手に、同席して下さっていた奥様の真由美さんが「でも、長崎って坂が多いじゃないですか? もちろん、ジムも行ってたんですけど、各ご家庭の点検に行く途中の階段の昇り降りでも鍛えてたんですよ」とナイスアシスト。

19歳で知り合って、初めてボートレーサーの試験を受けようと思うと聞いた時にはかなり驚いたという事ですが「本人がこれだけ頑張っているから、合格して欲しいっていう思いはありました。」とずっと見守り続けていた真由美さん…と、もうひとり、国弘選手の合格を今か今かと待ちわびていたのが水摩選手でした。

「合格発表は封書で届くんですけど、僕はその時長崎で仕事してて、封書は福岡の実家に届くようになってたんです。そろそろかなぁ? って時に水摩さんが待ちきれなくて『ちょっと、まだ? まだぁ? 』って毎日のように電話がかかってくるんですよ。で、『今日くらいそろそろ届いとるかもね』って言ったら『分かった!』って言った後、しばらくしてまた電話がかかってきて『お前んちに行って、今ポスト開けたら封筒入ってたけん、ちょっと見てみるわ』って(笑)。僕も『お前に託すわ』って言って開けてもらったら『合格ぅ!!!』って叫んでくれて、それで知りました。だから、僕の合格を最初に知ったのは水摩さんです」と大笑いしながら、幼馴染だからこその嬉しい合格発表のやりとりを話してくれました。

こうして入学したやまと学校は、「きつかったですねぇ。よく怒られてましたし、厳しかった。でも、出てからの方がもっと怒られました…富士男さんに(笑)。だから結局、やまとよりも選手になってからの方がきつかった」と苦笑い。

原田富士男さん(右)と一緒に水神祭をしました
原田富士男さん(右)と一緒に水神祭をしました

「デビュー戦とそれから約2か月後の宮島でも一緒だったんですけど、デビュー戦からめちゃくちゃ怒られました。でも、それ以上に色々なことを教えてもらって。宮島の初勝利の時なんて、とりあえず富士男さんに怒られんように頑張ろう! って思って無我夢中でやってたら、いつの間にか1着取れてたって感じです。で、やっと褒めてもらえるかなぁ? って思ったら、一発目は鬼の形相だったんでびっくりして…でもその後すぐニコッって笑って『おめでとう!』って水神祭してくれました。今やったら冗談ってわかるんですけど、当時はびびりましたよ」と原田選手の技術はもちろん、その厳しさも、おちゃめな人柄もしっかりとそばで感じて弟子入りした国弘選手。

「実は、レースだけじゃなくてプライベートでも富士男さんなしでは…ってことがあって」と話してくれたのは、今年で5年目を迎える奥様との結婚についてでした。

国弘翔平選手(左)と奥様真由美さん(右)と到志(とうし)君(中)です
国弘翔平選手(左)と奥様真由美さん(右)と到志(とうし)君(中)です

「ある日、ペラ小屋で作業してたら突然、『お前もう結婚せぇ。今から式場行くぞ!』って式場に連れていかれて見学の予約をしたんです。もちろん、もう付き合いが10年近くなってたんで結婚するならこの人だなぁっていうのはずっとあったんですけど、富士男さんが背中を押してくれました。子供も生まれて、なおさら頑張らんといけんなって思ってます」とにっこり顔を合わせたご夫妻に、私まで幸せな気持ちにさせて頂きました。

今後の目標を尋ねると、「大きくは言えないですけど、まずはA2になりたいですね。で、A2になったら絶対A1っていうふうに欲も出ると思うんで、まずはA級目指してどんどん欲も出していきたい。もちろん優勝もしてみたい…いやしたいと思ってるんで頑張ります!」と話してくれた瞬間に、お子さんの「やー!」という応援の声が響いた、笑いの絶えない今回の取材でした。

 
 

結婚のきっかけを作った原田選手に、この時の事を尋ねると「結婚して、男としての責任を持ってやった方が、もうひとつレベルアップすると思ったから。」とのこと。

技術だけでなく、いろんな角度から見守って下さって、メンタル面も厳しく育ててもらったことが、今の自分にとって本当に良かったと、国弘選手も感謝してもしきれないと話して下さいました。

 
 

○…芦屋ボートでは、21年2月23~28日まで、G2レディースオールスターが開催される。ファン投票によってB1級以上の選手が52人選ばれる。福岡レディースは大山千広、小野生奈、日高逸子、川野芽唯、竹井奈美、魚谷香織ら実力者ぞろい。地元のビッグレース出場へ、常にファンの注目を集める走りを展開するはず。今後の女子レーサーたちの走りを追いかけたい。