【ヤマコウの時は来た!】

 準決10Rの川村晃司の背中には気迫が宿っていた。それを感じて村上義弘はインタビューで「差せなかったのは気迫の差です」と川村をたたえた。藤木裕が「自分が前で」と志願した理由の1つに、藤木の迷いがあると思う。勝ちたい気持ちと戦法に悩む自分。それが初日1予の川村-藤木という並びに出た。1着になっても何か素直に喜べない。モヤモヤを払拭(ふっしょく)したい気持ちもあって、準決で先行した。そんな藤木の気持ちをくんで、川村は番手から発進。新田祐大にまくられはしたが村上と決勝に進出した。

 そして、今度は三谷竜生-川村-村上と並ぶ。必ず主導権を取りたいという気持ちが伝わってきたのは三谷。次いで竹内雄作、新田といったところか。竹内も地元勢を連れて恥ずかしいレースはしたくないだろうが、三谷はG1初決勝。無欲でこのレースに挑んでくるだろう。

 もう1つ近畿勢の評価を上げたところは、「2年前の名古屋の声援は忘れない」と、前検日から村上が言っている点だ。あのダービーでの声援がいかにうれしかったか。それは、2予での1着インタビューにも表れていた。「あの時の気持ちは忘れていません」とインタビューでは伏し目がちな村上が、テレビカメラをグッと見た。そこに感謝の気持ちを精いっぱい表現したのだと思う。地元勢を応援したい気持ちは十分あるが、ここは村上を本命に推した。(日刊スポーツ評論家・山口幸二)