村上義弘(42=京都)が4年ぶり2度目の戴冠で16年を締めくくった。輪界最強の称号をかけたKEIRINグランプリ2016(GP)は、盟友稲垣裕之(39=同)の果敢な先行に乗り、番手発進から激戦を制した。年間獲得賞金は2億2920万4000円となり、2億円達成は通算8度目(7人)で史上3番目の記録となった。

 魂の「村上劇場」が底冷えするGP生誕のバンクを熱く焦がした。「まだ夢の中にいるようで…」。激走の戴冠に戸惑いながらも「毎年、これが最後と思って走っている。8人と比べて脚力で勝っているかというと、そうでもない」。走る魂だけが勝っていた。

 スタートから激しい戦いとなった。村上義弘は号砲と同時に飛び出した渡辺一成、平原康多と並走状態のまま1歩も譲らない。「(気温低下で)バンクコンディションが重そうな感じ。稲垣の持ち味を発揮させるためにも前で」と、自ら脚力を使い先頭を確保して稲垣を招き入れた。

 作戦は的中した。青板バックで新田祐大が前を押さえると、平原がその上から押さえた。想定通りの別線の動きに合わせて赤板から稲垣が踏み上げて打鐘先行。5番手にいた平原が最終2角手前でまくりを放つ。「平原の姿が見えた瞬間、とっさに前に踏んだ。稲垣が作ってくれた展開だから」。おとこ気の先行を無にはできない。4角まで外並走した平原とのもがき合いも、外を加速した武田豊樹とのゴール前勝負も制した。

 42歳-。迫り来る年齢の壁と格闘する。「うまく勝ちきれない1年だった。自分を信じ切れない部分もあった」と吐露する。前検日に3人の愛娘が手作りしたピンクのお守りを受け取った。「勝」の文字が刺しゅうされたお守りを胸のど真ん中に付けて決戦に臨んだ。

 「GPは必ず、家族を呼ぶ」。これが村上の流儀だ。10度目の節目は見守る家族の目の前で最高の「村上劇場」を激走で演じきった。

 新しい年は2度目の1番車を背負う。「正直、また地獄のような日々が続く(笑い)」とジョークを飛ばしたが「いくつになっても夢はかなえられる。また新たな夢に向かって」。新たな魂のドラマを演じる。【大上悟】

 ◆村上義弘(むらかみ・よしひろ)1974年(昭49)7月6日、京都市生まれ。花園高卒。73期生として94年4月小倉でデビュー。00年ふるさとダービー豊橋でG2初制覇、02年岸和田全日本選抜でG1初制覇し、通算G1優勝6回。GPは12年京王閣に続き2度目。通算1807戦571勝。通算獲得賞金17億4982万4189円。170センチ、76キロ。血液型O。