【ヤマコウ・輪界見聞録】

地元の御大・村上義弘は、高知共同通信社杯決勝の傷が癒えずに欠場となった。ずっと突っ走って頑張ってきただけに、たまには第三者の立場で地元G3を見ると、思わぬ発見があるかもしれない。

特選12Rを走る稲垣裕之も精彩を欠いている。前回の高知も、かつての稲垣とは思えない出来だった。昨年はSS班として頑張ってきた。いや、タイトルが見え始めた頃から気を張って走ってきたことだろう。昨年後半くらいから疲れが見え始め、今年に入ってから目に見えて成績が悪くなった。一種の燃え尽き症候群だろう。本人は「もっといい成績を残そうと思って、気は抜いてないですよ」と言いそうだが、人間である以上、これは仕方ないと思う。踏ん張ろうと思えば思うほど空回りする。こんな時は柳になった方が良い。風の流れに逆らわないで身を任せるのだ。「運があれば勝てる。勝てなければこの開催は縁がなかった」。後ろ向きの考えに思えるだろうが、競輪に限らず、勝ちたいところでなかなか勝てないのが現実だ。その中で私はそう考えてきた。すると張り詰めた思いがスッと抜けていった。

稲垣はタイトルも取り、いろんな勲章を手にしてきた。そんな選手がこのまま終わるわけがない。どっしりと構えたらいい。勝ちはあとから付いてくる。

このレースは、近藤隆司が好調なだけに難敵だが、三谷竜生が仕掛けどころを逃さないレースを続けている。焦らず気負わず走れば、自然と成績は付いてくるだろう。(日刊スポーツ評論家・山口幸二)