いまだかつて、これほど腰の低い45歳に会ったことがない。白戸淳太郎(神奈川、74期)だ。

京王閣前検日の18日、こう話しかけた。

「あと2勝で区切りの300勝だね」

白戸は、誰からも愛される笑顔でこう答えた。

「いや~、今年中には何とか達成…いや、来年の早い時期には何とかしたいですけどね~。今開催? 何を言ってるんですか~、無理です、無理ですって。周りをみてくださいよ。みんな強いんだから」

字面だけ見ると(もしかしたら)嫌みに映るかもしれないが、普段から周囲を和ませ、自然と癒やしの空間を作り出している白戸だけに、心底そう思っているのがその表情から伝わってきた。

その白戸が初日特選6着後、準決で3角から外を伸びて快勝し「こんなに伸びるとは…」と自分でも目を丸くする。そして翌日の決勝でも、ゴール前で差し足を伸ばしまさか(失礼)の優勝=300勝を達成してしまったのだから驚いた。

白戸淳太郎選手(撮影・栗田文人)
白戸淳太郎選手(撮影・栗田文人)

当方、当日は他場での取材があって生観戦ができなかったので、祝福のLINEを送った。すると、すぐに返信が。

「ホント自分でもビックリですよ(汗)まさかまさか…(汗)まぁ(東)龍之介が気合入れて頑張ってくれたおかげです。でも久しぶりの優勝は素直にうれしいです(万歳)」

調べてみると、14年4月の弥彦以来、約4年半ぶりの優勝。久々の優勝を区切りの勝利で飾るなど、劇画の世界でもなかなかできない。案外「持ってる」男なのだ。

以前、同県同期の選手数人に、白戸について聞いたことがある。すると皆が口をそろえてこう言った。

「あいつは普段はあんな風ですけど、人一倍努力をしているんですよ。僕ら同期の希望の星なんです」

周囲を和ませ、そしてベテランになった今でも存在感をそこそこに示す。格好いいぞ、白戸。これからもますます頑張れ!

タイガーマスクで勝利者インタビューに答えた篠原忍選手(写真は準決快勝時=撮影・栗田文人)
タイガーマスクで勝利者インタビューに答えた篠原忍選手(写真は準決快勝時=撮影・栗田文人)

ちなみに、A級決勝は篠原忍(愛知、91期)が優勝。これは準決快勝時の写真だが、こういうキャラクターは実にありがたい。こちらも、おめでとう!【栗田文人】